2026年2月、インド・ニューデリーで開催された国際AIイベント「India AI Impact Summit 2026」から約1ヶ月が経過し、現場を通じて見えてきたAIのトレンドや未来について3回にわたりレポートします。 サミット全体では最新技術の紹介だけでなく、AIが実際の業務の中でどのように活用されるのかという、より実用的な観点からの議論が数多く見られました。Zoho が出展したブースでも、「実際に使えるのか」「どのように業務に組み込めるのか」といった具体的な質問が多く寄せられ、AI活用の関心が新たなフェーズに移りつつあることが感じられました。 India AI Impact Summit 2026に出展したZohoブース。自社開発のAI基盤「Zia」のデモに多くの来場者が関心を示した。 【India AI Impact Summit 2026 について】 India AI Impact Summit 2026は、インド政府(MeitY:電子情報技術省)が主催する国際AIイベントで、今回は30カ国・300以上の企業・団体が参加しました。AIの社会実装・産業活用・AI政策をテーマに5日間にわたって議論が行われました。AIをめぐる議論の地政学的な重心が、確実に移動しつつあるといえるでしょう。 会場全体を通じて繰り返し浮かび上がったキーワードは「ソブリンAI(AI主権)」と「AIの民主化」の2つです。AIを一部の巨大テクノロジー企業が主導する構造への問い直しと、AIの恩恵をより広く社会全体に行き渡らせるべきという思想が、政府・企業・研究機関を横断して共有されていました。この2つのテーマについては、次回(第2回)のニュースレターで詳しくお伝えします。 【Zoho ブースに集まった問い】 Zoho は本イベントにブースを出展し、自社開発のAI基盤「Zia」を中心に展示を行いました。来場者の関心は、技術そのものよりも「実際に使えるのか」という点に集中していました。なかでも最も多かったのが「Zia LLM(Ziaの基盤となる大規模言語モデル)」に関する問いです。特に多く聞かれたのは、以下の点です。 「パラメータ数はどのくらいか」 「使用GPUの構成は」 「全製品で利用できるようになるのはいつか」 一見スペックへの関心のように見えますが、その本質は「このAIは自分たちの業務の中で実際に使えるのか」「どこまで自分たちで理解・制御できるのか」を確かめようとする意図が感じられました。 Zia LLMはZoho が自社で一から開発した大規模言語モデルで、企業向けビジネス用途に特化して設計されています。汎用的な性能競争に加わるのではなく、CRM・財務・人事・カスタマーサポートといった業務データを横断的に理解し、実際のワークフローの中で動くことに最適化されている点が特徴です。 Zoho はこれらの業務アプリケーションを自社で一体的に開発・提供しているため、製品間のデータを連携しながら、業務の流れに沿った形でAIを活用できます。 さらに多く寄せられたのが、データ保護に関する問いでした。 【Zoho ブースで見られたもう一つの関心:データ管理】 「顧客データをモデルの学習に使うのか」 会場では、データセキュリティやプライバシーに関する関心の高さも目立ちました。AIの活用においては利便性だけでなく、データの取り扱いをどこまでコントロールできるのかが重要な論点となっていることがうかがえました。 Zoho は「プライバシーファースト」の方針のもと、こうした関心に応える設計を重視しています。データセキュリティとAIガバナンスの問いについては、第3回のニュースレターで詳しく取り上げます。 【1ヶ月が経過して見えてきたもの】 India AI Impact Summit 2026の開催から約1ヶ月が経過しましたが、今回のサミットで見られた議論は、近年のAI活用の潮流を映し出すものだったといえます。 Zoho ブースに集まった問いを振り返ると、「どれだけ高性能か」ではなく、「実際の業務の中でどこまで使えるのか」という視点に関心が移っていることが改めて確認されました。AIは“導入するもの”から、“業務に組み込み活用するもの”へと、その捉え方が変化しつつあることがうかがえます。 また、データの取り扱いや管理に関する関心の高まりからは、AIをどこまで自社で理解し、コントロールできるのかという問いが、より重要になっていることもうかがえました。こうした変化は、今回のサミットで新たに生まれたものというより、近年強まりつつあるAI活用の方向性が改めて鮮明になったものといえます。 こうした流れを理解するうえで欠かせないのが、「ソブリンAI」や「AIの民主化」という視点です。次回は、