世界最高峰の自転車ロードレース『ツール・ド・フランス』が2026年7月4日(土)から26日(日)まで23日間の日程で開催される。総距離3321.2km。出場184選手。スペインのバルセロナで開幕する第113回大会を前に、五輪3大会出場のオリンピアンであり、ツール・ド・フランスも夢見たというブリヂストンサイクルの飯島誠氏がレースの持つ魅力と国際中継で注目すべきポイントを語った。なお飯島氏は無料配信となる第1ステージと第2ステージをはじめ、解説を務める。 ■マラソンを21日こなせる理由は自転車ならではの要因と最新コンディショニングがあるから ツール・ド・フランスは自転車ロードレースの中でも世界最高峰の大会であり、8人編成の23チーム、つまり合計184選手という限られたトッププロ選手だけが出場できる特別な舞台である。世界随一の観光大国フランスの随所にある世界遺産、歴史的建造物をつなぎ合わせるようにコースが設定され、地元の人たちが日常で使う道路を時速50kmのスピードで駆け抜けることが大きな魅力とされている。 「ロードレースは連日長距離を走る過酷な競技ですが、マラソンなどと比べれば路面からの衝撃が少ないため、筋肉疲労はあっても身体のダメージは比較的抑えられます。レース中の栄養補給、フィニッシュ後のリカバリー食やマッサージなどの進化により、選手たちは(休日2日を除く)21ステージを走り抜くことができるのです。求められる能力は持久力だけでなく、瞬発力、暑さや寒さへの適応力、胃腸の強さなど総合的なタフさです」と飯島氏。 自転車ロードレースの特殊な競技形態にも注目してほしいという。成績は個人で争われるが、実際にはチーム戦の要素が非常に強い。「エースを勝負どころまで温存させるために、アシスト選手が風よけになったり、水や補給食を運んだりする。名前が残るのは優勝者だけですが、その勝利はチーム全体でつかむものなのです」 ■21レースには平坦あり、タイムトライアルや過酷な山岳も 1日ごとのレースはステージ(区間)と呼ばれ、平坦、山岳、タイムトライアルなどがあり、それぞれで戦い方と選手に求められる能力が異なる。平坦ステージでは大集団が一緒にフィニッシュになだれ込む可能性が高く、スプリンターや大柄な選手が優勝しやすい。タイムトライアルは一人ずつ走るためタイム差がつきやすく、総合優勝争いに直結する重要な種目となる。山岳ステージでは体重に対する出力、いわゆるパワーウェイトレシオが重要で、総合順位が大きく動く可能性が高い。 「今年の大会はスペイン・バルセロナで開幕し、第1ステージではいきなりサグラダ・ファミリアの横を通過します。その後はピレネー、中央山塊、ジュラ、アルプスなど多様な山岳地帯を通過し、レースだけでなく空撮による風景や旅気分も楽しめるのがツール・ド・フランスの魅力」という飯島氏が、見逃してはならぬと断言するのがアルプス山脈で行なわれる第20ステージ。 「クイーンステージと呼ばれる最難関ステージで、距離170.9km、獲得標高5450m、有名なガリビエ峠を含む過酷なコースとなっており、総合順位を大きく左右する可能性があります。最終日前日にまさかの逆転劇が演じられる可能性があるんです」 ガリビエ峠を登る選手たち(2022年ツール・ド・フランス/第11ステージ)Getty Images ■ポガチャル、ヴィンゲゴー2強に待ったをかける新鋭! 総合優勝候補としては、近年のツール・ド・フランスで活躍するUAEチームエミレーツ・XRGのタデイ・ポガチャル(スロベニア)とチーム ヴィスマ・リースアバイクのヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)が中心に挙げられる。3年連続5度目の総合優勝をねらうポガチャルは現世界チャンピオン。ツール・ド・フランス最多勝は5勝で、自転車界の英雄ばかり4選手が並んでいるが、今年はポガチャルがその仲間入りを果たすかに注目される。3年ぶり3度目の総合優勝を目指すヴィンゲゴーは、ポガチャルさえ達成していない三大ステージレース全制覇の偉業を達成している。 「ポガチャルはこの世界で宇宙最強と表現されるほど圧倒的な勝率を誇り、優勝候補筆頭」という飯島氏が、ライバルのヴィンゲゴーにつけたキャッチフレーズが「地球最強」。「過去にポガチャルを破った実績があり、今年は順調に調整できている点が強み」とネーミングの理由を述べる。さらに、「フランス期待の19歳、デカトロン・CMA CGMチームのポール・セクサスも注目選手として挙げられます。開催国フランスに1985年以来の総合優勝をもたらす可能性を秘めています」 飯島氏は、「ポガチャルのチームには代替エースになり得る若手のイサーク・デルトロ(メキシコ)がいる一方、ヴィンゲゴーのチームは本人を中心としたワントップ体制」と