新潮社から本日6月24日発売する『高畑勲と「火垂るの墓」 ─「幻の脚本」と「7冊の構想ノート」を読み解く』(寺越陽子著)。本書で初めて公開される「幻の脚本」の内容が、6月17日の読売新聞社会面で紹介されました。 高畑監督による脚本・演出で作られた映画「火垂るの墓」ですが、じつはもうひとつ別の「幻の脚本」がありました。高畑監督の没後に自宅から発見された貴重な資料です。「幻の脚本」のほかにも、本書には「劇場公開時のフィルム」の発見、さらには「火垂るの墓」制作スタッフが明かす秘話も数多く掲載しています。 寺越陽子著『高畑勲と「火垂るの墓」』(新潮社刊) ■(1)「火垂るの墓」に「幻の脚本」があった 「幻の脚本」を書いたのは、脚本家の深沢一夫さん(2016年に逝去)。深沢さんは、高畑監督が演出したアニメーション映画「太陽の王子 ホルスの冒険」や、テレビシリーズ「母をたずねて三千里」で脚本を担当したことでも知られています。 野坂昭如さんの原作小説から起こした「幻の脚本」はどんな内容だったのか。そして、いったん書かれた脚本に何が起きたのでしょうか。 「親父が『火垂るの墓』を書いていたことは知ってました。その頃、俺はすでに家を出ていたから、親父と直接話す機会はあまりなかったんだけど……。きっとおふくろから聞いていたのかな。でも、実際に親父がどんな『ホン(脚本)』を書いたのかは、全く知らなかった」 (深沢一夫さんの息子の)勲夫さんは、初めて目にするというシナリオのコピーを見て、文字を確かめるように指先でなぞった。 (『高畑勲と「火垂るの墓」』7章より) 本書では深沢さんのご遺族に取材をするとともに、脚本の内容を原作小説、さらに映画「火垂るの墓」と比べて読み解きながら、名作誕生の舞台裏に迫っていきます。 ■ (2)劇場公開時のフィルム発見 本書で初めて公開される事実、その二つ目は、制作が間に合わず、劇場公開時に色が塗られず〝線画のままとなった場面〟を含むフィルムデータについてです。ETV特集が放送された後に、その存在と詳細が確認されました。 本書冒頭のカラー口絵ページに入る画像より このフィルム発見については6月17日のNHK「おはよう日本」が紹介、高畑勲作品の研究者による「とても貴重な資料」という見解が示されました。 実際にこのフィルムデータを閲覧した著者、NHKディレクターの寺越陽子さんはその時の様子をこう記録しています。 「それでは、映像をご覧いただきます」 新潮社で用意されていたのは、発見されたフィルムそのものではなく、すでにデジタル化された映像だった。あくまで簡易的な作業にとどめているため、修復(レストア)や色彩補正(カラーグレーディング)は一切施されていない。現在のビデオソフトで見慣れた画像よりも全体的に色が淡く見えるのは、補正前のネガ特有の状態だからだという。 当時の劇場では、この淡い背景の中に、色のない「線画」がいっそう力強く、鮮明に浮かび上がっていたはずだった。音は入っておらず、該当部分のみが抽出されているため、88分の本編として通して観ることはできない。わたしはそのような前提を踏まえながら、ついに、「幻のフィルム」と対面した。 (『高畑勲と「火垂るの墓」』7章より) この貴重なフィルムデータから切り出した画像2点を、本書の冒頭カラー口絵ページ(8ページ)に掲載しています。 本書冒頭のカラー口絵ページに入る画像より ■ (3)スタッフが語る制作秘話 映画「火垂るの墓」スタッフに著者が取材を重ねるなかで、驚くような制作秘話も飛び出しました。高畑監督に言われて「凄く念入りに」時代考証を進めていたという演出助手の須藤典彦さん(アニメーション演出家)は「焼夷弾の筒を買った」といいます。 「お昼を食べに吉祥寺の駅の近くまで行って、その帰り道に、近くにお寺があるのかな、そこの境内で蚤の市っていうか、フリーマーケットをやってたんですよ。何気なく通りすがりに見てたら、その中に焼夷弾の筒を売ってるところがあった」 「じゃあ買いますって言って。そんなに高くなかったんですよ。2000円ぐらいだったかな。買ってスタジオに持って帰ったら、みんなエーッと驚いたのは覚えてますけどね」 「結局、その焼夷弾は映画の音響効果さんに貸して、実際にそれを地面にぶつけて、焼夷弾が落ちる時の効果音をつくっていた」 (『高畑勲と「火垂るの墓」』5章より) 昨年に続いて、今年も映画「火垂るの墓」がNETFLIXで国内配信することが発表されました(配信開始7月15日)。 読めば新たな視点が得られること間違なしの、新刊『高畑勲と「火垂るの墓」―「幻の脚本」と「7冊の構想ノート」を読み解く』です。 書籍詳細はこちら 高畑勲(たかはた・いさお) 高畑勲監督=2016年撮影 日本のア