株式会社ローランド・ベルガー(東京都港区、代表取締役:大橋 譲、以下「ローランド・ベルガー」)は、日本の上場企業CxO・経営企画責任者200人を対象に、生成AI時代における戦略実行の難しさについて「第5回 上場企業CxO・経営企画責任者への意識調査」を実施いたしました。 生成AIによって戦略を「描く」コストが劇的に下がった今、企業価値を分けるのは戦略を描く力ではなく、描いた戦略を実行し成果に変える力です。本シリーズでは、生成AI時代における「戦略実行」をテーマに、なぜ戦略は実行されないのか、着手・完遂できる組織は何が違うのかを、調査データから解き明かします。 第1回(本稿)|経営課題の重心は「策定」から「実行」へ 第2回|戦略実行を止めるのは「決められない組織」 第3回|鍵は「アジャイル組織」への移行 第4回|外部協力会社を「加速装置」として使いこなす なお、前回「第4回 上場企業CxO・経営企画責任者への意識調査」については、 こちら をご覧ください。 調査結果の主なポイントは3点です。 ① 経営課題の重心はすでに戦略“策定”から“実行”へシフト。好業績企業では「実行」を課題とする割合が「策定」の約1.5倍に達する一方、業績不振企業では依然として「策定」に課題意識が残る。 ② 生成AIの普及後も、戦略の着手率・完遂率はほぼ改善していない。着手率はAI普及前後で約53%と横ばい、完遂率も約50%にとどまり、戦略の半数近くが実行に移されない、あるいはやり遂げられない状況が続いている。 ③ 戦略の陳腐化は加速する一方で、実行力は追いついていない。戦略の有効期間はAI普及前後で約11.3カ月から10.6カ月へと短縮しており、「策定してから実行する」という分離型アプローチそのものが限界に近づいている。 *本調査における好業績企業とは、本調査において、競合と比較した時の自社の売上成長率に対する認識を「競合より良い」と回答した企業、業績不振企業は「競合より悪い」と回答した企業を指します。 ① 経営課題の重心はすでに戦略“策定”から“実行”へシフト。好業績企業では「実行」を課題とする割合が「策定」の約1.5倍に達する一方、業績不振企業では依然として「策定」に課題意識が残る。 生成AIの普及により戦略策定のハードルは大きく下がり、フレームワークを用いた市場分析やシナリオ設計は広く実施可能となっています。その結果、戦略の質は底上げされる一方で、差別化は難しくなっています。 一方で、実行できる組織とできない組織の格差はむしろ拡大しており、競争優位の源泉は戦略の質から実行能力へと移りつつあります。この結果、戦略“策定”に課題を感じる経営者の約1.2倍が、戦略“実行”に課題を感じています。 過去のCxO調査においても「経営課題の重心が戦略策定から実行へ移行している」ことを明らかにしてきましたが、今回の調査でも同様の傾向が確認され、経営課題の重心は明確に戦略“実行”側にあることが示されました。 さらに、好業績企業では戦略“実行”に対する課題認識が“策定”の約1.5倍に達する一方、業績不振企業では依然として“策定”への課題意識が“実行”の約3倍と、対照的な傾向が確認されました。 これは、「良い戦略を作ること」にとどまらず、「策定した戦略を実現しきること」を経営課題として捉えているか否かが、企業の競争力を分けている可能性を示唆しています。 ② 生成AIの普及後も、戦略の着手率・完遂率はほぼ改善していない。着手率はAI普及前後で約53%と横ばい、完遂率も約50%にとどまり、戦略の半数近くが実行に移されない、あるいはやり遂げられない状況が続いている。 生成AIの普及により、戦略策定作業の効率化は確実に進んでいます。しかし、本調査が示しているのは、その効率化がそのまま着手・完遂能力の向上には結びついていないという事実です。 着手率及び完遂率は、AI普及の前後で大きな変化は見られず、策定された戦略の約半数は着手されていません。さらに、着手された施策のうち、相当数が完遂に至っていないのが実態です。 「AI普及後の方が完遂できる」とする回答は、「普及以前の方が完遂できる」とする回答の約2.1倍に達しています。一方、着手については同様の差は見られず、約1.3倍にとどまっています。 生成AIは、実現可能性の高い計画立案や実務レベルの作業支援には寄与しており、結果として完遂の確度を高める側面があると考えられます。 一方で、「着手するか否か」は、意思決定プロセスや権限配分、組織内の合意形成のあり方といった構造的要因に強く依存しており、依然として大きな壁が残っています。 ③ 戦略の陳腐化は加速する一方で、実行力は追いついていない。戦略の有効期間はAI普及前後で約11.3カ月から