ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:瀬木英俊)は、「Connect for Well-being & Longevity」の実現に向け、細胞研究を基盤とした「Longevity」サイエンスに取り組んでいます。さらに当社では、自然界の力を科学的に解明し、新たな価値として現代社会に届ける「フィトサイエンス構想」も推進しています。その一環として、古くから活力維持素材として利用されてきた冬虫夏草に着目しました。含有成分にこだわった冬虫夏草エキスを用いて、エネルギー代謝低下状態を誘導した表皮細胞および加齢ドナー由来表皮細胞への作用を検討しました。その結果、冬虫夏草エキスは細胞内ATPレベルおよび角層バリア機能を改善する可能性が示されました。本研究成果は、美容施術後や日常ダメージを受けた肌、さらに年齢とともに機能が低下しやすい肌の回復を支える新たなスキンケア技術として、今後の製品開発に活用してまいります。 1.研究成果のポイント ◆ 冬虫夏草エキスが、エネルギー代謝が低下した表皮細胞の活力維持に関わる可能性を確認 ◆ 冬虫夏草エキスが、加齢に伴う機能変化が想定される表皮細胞においてうるおいやバリアを支えるセラミドおよびフィラグリンの発現上昇を確認 ◆ 冬虫夏草エキスのメタボローム解析により、ATP改善作用および角層バリア関連因子の増加に関与する成分プロファイルを確認 2.研究の背景 近年、ハリ・うるおい・なめらかさなどの肌実感を高める美容医療やエイジングケア化粧品への関心が高まっています。こうしたケアによって整えられた肌状態をすこやかに保つためには、肌本来の回復力やバリア機能を支えることが大切と考えられます。 肌のうるおいやバリア機能を保つためには、表皮細胞が十分なエネルギーを得ながら働くことが重要です。しかし、加齢や紫外線、乾燥、炎症、生活習慣などの影響を受けると、エネルギー源であるATPをつくる働きが低下し、エネルギー代謝低下状態になる可能性があります。ATPの低下は肌の生まれ変わりや角層形成、肌のうるおいやバリア機能低下につながることが考えられます。 そこで当社は、表皮細胞のエネルギー状態を支える新たなアプローチとして、複数の代謝物やアミノ酸が含まれる冬虫夏草に着目しました。今回の研究では、エネルギー代謝低下状態や加齢ドナー由来表皮細胞を用いて、冬虫夏草エキスが細胞内ATP状態や肌のうるおい・バリア機能にどのような影響を及ぼすかを検討しました。 3.結果 結果1 エネルギー代謝低下状態の表皮細胞において、細胞内ATPレベルを増加させることを確認 本試験では新生児由来表皮細胞を低グルコース条件で培養し、エネルギー代謝低下状態を再現しました。細胞内ATPを可視化するATP-Red染色を用いて、冬虫夏草エキスが細胞内ATPレベルに及ぼす影響を評価しました。 その結果、冬虫夏草エキスの添加によりATP-Redシグナルの増加が確認され、エネルギー代謝低下状態におけるATPレベルの維持・改善に関与する可能性が示唆されました(図1左)。そこで、本試験に使用した冬虫夏草エキスのメタボローム解析を行った結果、116種の代謝物が検出され、その中に細胞のエネルギー代謝を支える低分子成分として知られる13成分が含まれていました(図1右)。これらの結果から、冬虫夏草エキスは、エネルギー代謝関連成分を複合的に含み、エネルギー代謝低下状態の表皮細胞においてATPレベルの維持・改善をサポートする可能性が示されました。 図1. 冬虫夏草エキスのエネルギー代謝低下状態の表皮細胞への作用と冬虫夏草エキスに含まれるATP産生促進成分の解析 <試験方法> 新生児由来表皮細胞を用い、ATP-Red染色法を用いて細胞内ATPレベルを評価した。(ロート製薬研究所実施) 冬虫夏草エキス中のエネルギー代謝関連成分は、CE-TOFMSを用いて解析した。(外部試験機関実施) 結果2 冬虫夏草エキスが角層バリア形成に関わる因子を増加させることを確認 新生児由来表皮細胞および加齢ドナー由来表皮細胞を用いて、冬虫夏草エキスの肌のうるおいやバリア機能に及ぼす影響を評価しました。その結果、加齢に伴うエネルギー代謝の変化が想定される加齢ドナー由来表皮細胞においても、冬虫夏草エキス添加によりセラミドおよびフィラグリンの発現レベルが上昇しました(図2左)。また、結果1と同様に冬虫夏草エキスのメタボローム解析を行ったところ、フィラグリンの元となる9種類のNMF関連成分が確認されました(図2右)。これらの結果から、冬虫夏草エキスはNMFを複合的に含み、肌のうるおいやバリア機能を支える可能性が示されました。 図2. 冬虫夏草エキスの表皮細胞におけるセラミドおよびフィラグリンへの作用と冬虫夏草エキスに含まれ