組織行動科学®を提供するリクエスト株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:甲畑智康)は、980社・33.8万人の実践と分析をもとに、AI時代に企業に残る「判断」とは何かを整理したレポートを公開しました。 レポートのダウンロード d68315-191-ee0eaef1cf035a02285076995c6a1e99.pdf 今回のテーマは、 AI時代の人材育成や仕事設計の前提となる、最も基本的な問い です。 すなわち、 企業で言う「判断」とは、いったい何を指すのか という問いです。判断の重要性は多くの企業で語られるようになりましたが、その中身が曖昧なままでは、育成も設計も進みません。そこで本レポートでは、 判断を抽象的な能力論ではなく、実務上の行為として定義 し直します。 生成AIの普及により、知識をもとに答えること、情報を整理すること、既存手順に沿って処理することは、これまで以上に速く、正確に進めやすくなっています。 また、前例を使う仕事についても、 今回の条件が過去とほぼ同じで、前例をそのまま適用してよい場面 では、AIによる補完が進みやすくなっています。 一方で、企業の現場には、 顧客ごとに事情が違う 案件ごとに制約が違う 現場ごとに優先順位が違う 関係者ごとに見ている論点が違う といった仕事が数多く残ります。こうした場面では、前例を参照するだけでは足りません。必要なのは、 今回は何が違うのかを確かめ どこまで前例を使い どこから進め方を変えるべきかを決める ことです。当社では、 このように条件差を踏まえて進め方を決める行為を「判断」 と捉えています。前例を知ること、手順を理解すること、過去事例を共有すること自体は今後も必要ですが、それだけでは足りないというのが、今回の中心論点です。 ここでいう「仕事」とは、単なる作業名や職種名ではありません。営業、企画、管理、現場運営、顧客対応、部下支援、制度運用など、企業で日々行われている実務全般を指しています。ただし、重要なのは仕事の名前ではなく、 その仕事がどのような条件で成立しているか です。 やり方や基準を具体的に教えれば安定して進む仕事なのか それとも、相手や状況の違いに応じて、優先順位や対応方針を変える必要がある仕事なのか この違いを見分けないままでは、仕事の中身を正しく捉えることはできません。実際、 以前のレポート「経験を必要としない知識・経験を必要とする知識」 でも、仕事を職種や役職で分類するのではなく、その知識が「手順で成立するのか」「判断を引き受けないと成立しないのか」で見るべきだと整理されています。 なぜ、仕事で判断が必要なのか 判断が必要になる理由は、仕事に「差」があるからです。 ここでいう差とは、単なる違いではありません。顧客差、案件差、現場差、制約差、関係者差、時間差、優先順位差など、 前回と同じやり方では進め方を決めきれなくなる条件差 のことです。こうした差がある以上、仕事は知識や前例を当てはめるだけでは完了しません。何を確認するのか、何を比較するのか、何を優先するのかを、その都度決める必要があります。だから判断が必要になります。 逆に言えば、すべての仕事に同じ濃さで判断が必要なわけではありません。 前例や手順で成立する仕事では、それらを整えることは合理的です。問題は、 判断が必要な仕事まで、前例や手順だけで扱おうとしてしまうこと です。どの仕事が前例や手順で進み、どの仕事には判断が残るのかを切り分けなければ、AI活用も人材育成もずれていきます。 前例に基づくことも判断ではないのか ここで、読者の多くが感じるであろう疑問があります。「前例に基づいて決めることも、判断ではないのか」という疑問です。これは半分正しく、半分不足しています。 前例を参照すること自体は、もちろん重要です。知識を持つこと、手順を理解すること、前例を知ることは、今後も必要です。むしろ、それらは判断の土台になります。問題は、 前例を使うこと ではなく、 今回の条件差を見ないまま前例をそのまま当てはめること です。 判断とは、前例を使うか使わないかの二択ではありません。前例を土台にしながらも、今回の顧客差、案件差、現場差、制約差を見て、 どこまで前例を使い、どこから見直すべきかを決めること です。だから企業が育てるべきなのは、前例を知らない人ではなく、 前例を使いながらも、前例だけで進めない人 です。 判断とは、「前例を知らないこと」でも「何もないところから考えること」でもない 判断とは、知識が多いことそのものではありません。また、答えを早く出すことだけでもありません。さらに、何もないところからゼロベースで考えることでもありません。 判断とは、 既にある知識、前例、手順を土台にしながらも、