人と社会のために問いを探究する、リサーチとプランニングを手掛けるQO株式会社(代表取締役社長:恒藤優/本社:東京都中央区、以下「QO」)は、社会課題を知るきっかけを届ける研究機関 「Social Issue Lab(以下、SIL)」の活動の一環として、インクルーシブデザインなどを専門とするPROJECT SOLIT(以下、SOLIT)と共同で、全国の企業に就労する障害のある当事者、人事担当者、および一般社員など総勢3,104名を対象に「障害者インクルージョンに関する実態把握調査」を実施いたしました。 2026年7月1日の障害者雇用率引き上げという契機に合わせ、法定雇用率の達成や法的義務をクリアすることに重きを置くことで現場に発生している構造的な弊害をデータにもとづき客観的に明らかにするため、本調査結果を公表いたします。 <調査サマリー> 1.一般企業で働く障害者が抱える「キャリアの行き止まり」 一般企業で働く障害者の7割超が、現在の職場でキャリアの行き止まりを感じていることが判明。業務負荷の免除という配慮の一方で、キャリアのステップアップが閉ざされた環境が生じている。 2.対話と評価の空白 一般企業で働く障害者の約6割が「定期的なキャリア面談やサポートが存在しない」と回答。企業人事への調査からも約半数は「成果よりも安定勤務(現状維持)」を望む保守的な運用に陥っており、当事者との本質的な対話が不足している。 3.企業の障害者雇用が広がる中に潜む「圧倒的な無関心と認知の空白」 一般社員の約8割が「自分の同じ職場に障害のある社員はいない(と思う)」と回答。企業がトラブルや指導負荷を避けるために業務の隔離(特例子会社化や専門部署への隔離)を進めた結果、現場での接点や相互理解が失われている実態が明らかに。 調査実施背景:障害者雇用の転換期と現場が抱える課題とは 近年、日本における障害者雇用は大きな転換期を迎えています。合理的配慮の義務化や法定雇用率の引き上げを背景に、企業における障害者雇用の「量的拡大」は着実に進展しています。民間企業における雇用者数が毎年過去最高を更新し続けていることは、これまでの行政および企業の制度的・実務的な努力がもたらした明確な成果です。 しかし、こうした量的拡大という初期フェーズを通過したからこそ、次のステージにおける運用の形骸化や、受け入れ現場の「停滞」という新たな実態が浮かび上がっています。障害者就労者の定着や安定勤務が最優先されるあまり、中長期の育成プロセスや客観的な人事評価の規律から乖離し、成長の機会を奪われているというジレンマです。 本調査では、一般企業で働く障害者や作業所で働く障害者、企業人事、経営者・管理職・現場社員の多面的な視点から、この構造的課題の現在地を紐解きました。まずは速報データとして、現場の実態をあらわす3つの主要な調査結果を公表いたします。 調査結果:浮き彫りになった現場の構造的歪みと課題 (1)一般企業で働く障害者の7割超が直面する「キャリアの行き止まり感」 ● 今の仕事に対して、スキルアップできる見込みがない、昇給・昇格の見込みがないなど、キャリアの行き止まりを感じる 一般企業で働く障害者に対し、自身のキャリアに対する認識を尋ねたところ、全体の72.1%がキャリアの行き止まり(これ以上の昇進や昇給、職域拡大が望めない状態)を「感じる」「やや感じる」と回答しました。さらに、中でもこうした認識を「感じる」と答えた層は41.5%に上ることも判明しました。 残業時間の免除や業務負荷の軽減といった、物理的あるいは業務的な「配慮」が提供される一方で、それが中長期的な成長や昇格のパスから当事者を乖離させてしまい、本人がその環境に沈黙せざるを得ない実態が示されていると言えます。 (2)約6割の職場で機能不全を起こしている「評価と面談の空白」 ● キャリアに関する面談やサポート制度は「一切ない」 ● 不足していると思う配慮 一般企業で働く障害者に今後のキャリアや働き方・スキルアップについて、上司や人事担当者と定期的に相談・面談ができる制度の有無を尋ねたところ、58.8%がキャリアに関する面談やサポート制度は「一切ない」と回答しました。また、不足していると感じる配慮について尋ねた項目では、第1位が「評価基準の透明化(明確な基準、特性を考慮した目標設計など)」で21.3%を占めています。さらに、「会社が障害者雇用ということもあり業務量を過度に絞っている。そのため今後のキャリアや賃金上昇も期待できない」「ここまで出来るようになったら昇給するという明確な基準が全く示されない」といった、評価制度の不透明さに対する切実な声が寄せられています。 (3)企業が陥る「防衛的ガバナンス」の限界と、社内に広がる「圧倒的