ポイント ・シロコブゾウムシの成虫に寄生する寄生蜂を高校生が世界で初めて発見。 ・発見した寄生蜂は形態的特徴から未記載種であることがわかり、新種として記載した。 ・寄生蜂のメス成虫が寄主であるシロコブゾウムシ成虫の背中に乗る様子から、英語で「象使い」の意味を持つ”mahout”を種小名とした 【概要】 藤江 隼平(大阪市立自然史博物館)・藏滿 司夢(筑波大学生命環境系)・田村 和暉(当時 茗溪学園高等学校、現 茨城大学農学部)の研究グループは、シロコブゾウムシという、マメ科植物を食べる身近なゾウムシの成虫に寄生するコマユバチの仲間を発見しました。このハチの形態的特徴を検討した結果、ハラボソコマユバチ亜科Perilitus属に属する未記載種であることがわかり、Perilitus mahoutという新種として記載しました。種小名の”mahout”は英語で「象使い」という意味で、この寄生蜂のメスが寄主のシロコブゾウムシの背中に乗る様子に由来します。シロコブゾウムシに寄生する寄生蜂が発見されたのは、今回が世界初の事例となります。本研究グループが2017年に、シロコブゾウムシを数日間水に沈めても死なないということを発見、研究していたことが、今回の新種発見のきっかけです。 本研究の成果は、2026年6月15日(月)公開のZootaxa誌に掲載されました。 図1. 新種として記載した寄生蜂 Perilitus mahout メス成虫ホロタイプ(左側面から見た全景図) 【背景】 寄生蜂は様々な昆虫に産卵し、寄主となる昆虫の体を食べて暮らしている昆虫です。中でも、ハラボソコマユバチの仲間は幅広いグループの昆虫に寄生すること、通常はあまり利用されない成虫を寄主として利用できるものがいる点で特異な寄生蜂です。ハラボソコマユバチの中でも、いくつかの属は甲虫の成虫に寄生し、そのうちPerilitus属は世界で140種ほどが知られています。 【研究手法】 研究グループは、茨城県つくば市、奈良県橿原市、大阪府高槻市でシロコブゾウムシの成虫を野外採集し、クズの葉で飼育しました。シロコブゾウムシ成虫から寄生蜂が脱出し繭を作った後は、適度に湿った室温条件で保持し、繭から羽化した寄生蜂の成虫を得ました。寄生蜂は乾燥標本にし、顕微鏡を用いた形態観察、デジタルマイクロスコープを用いた各部位の写真撮影を行いました。 【研究成果】 茨城県で実施した調査では、70頭採集したシロコブゾウムシ成虫のうち、2頭がPerilitus属の寄生蜂に寄生されていました。寄主のシロコブゾウムシ成虫の肛門から、おおよそ20~50頭の寄生蜂幼虫が脱出し、それぞれの幼虫が独立して繭を作りました。寄生蜂幼虫が脱出した後のシロコブゾウムシ成虫は1日以内には死亡しました。羽化した寄生蜂のメス成虫をシロコブゾウムシ成虫と一緒に入れると、寄生蜂メス成虫がシロコブゾウムシを後ろから追いかけたり、体の上に乗りかかったりする行動が観察できました。 得られた寄生蜂の形態観察を行った結果、モンゴルが原産地のPerilitus eugeniiと形態的に類似しているものの、前方から見た頭部の特徴や後体節第1背板の彫刻などに差異がありました。また、中国で記載されたハムシの成虫に寄生するP. xynusにも形態が類似していましたが、複眼の形状や後体節第1背板の彫刻に差異がありました。これらの近縁な種と明確に形態的な違いがあると考えられたため、シロコブゾウムシに寄生するこの寄生蜂を新種としてPerilitus mahout と命名しました。種小名の”mahout”は英語で「象使い」という意味で、この寄生蜂のメスが寄主のシロコブゾウムシの背中に乗る様子に由来します。 図2. 寄主であるシロコブゾウムシ成虫の背中に乗るPerilitus mahout 【今後への期待】 日本において、Perilitus属の寄生蜂は、今回発見した新種を含めてもまだ3種しか記録されていません。近隣のロシア沿海州からは21種も記録されていること、すでに日本国内で得られた標本からいくつかの未同定種を見出していることから、今後も同属の分類学的な研究を進める余地が多く残されていると考えられます。 シロコブゾウムシに寄生する寄生蜂が発見されたのは、今回が世界初の事例となります。本研究グループでは2017年に、シロコブゾウムシを数日間水に沈めても死なないということを発見し、その後も研究を続けてきたことが、今回の新種発見につながりました。この寄生蜂がそのような強固な体を持ち、一見産卵する隙がないシロコブゾウムシに対して、どのようにして産卵・寄生することができるのか、解明を進めていきます。 【謝辞】 寄生蜂の同定に際し、ロシア科学アカデミー動物学研究所のSergey