NSGグループの新潟医療福祉大学心理健康学科の野村照幸教授は、精神疾患のある本人が不調時にどのように対処するかを、本人と支援者があらかじめ話し合い、共有する「クライシスプラン(CP)」について、その構造、作成方法、一般精神科医療への応用可能性を整理した論文を発表しました。 本論文では、CPを単なる病状管理や再発防止の手段にとどめず、本人と支援者が対話を重ねながら共に作り上げる「私たち(We)の計画」と位置づけ、リカバリーを支える支援ツールとして活用する意義を論じています。 本論文は、2026年5月7日付で「Psychiatria et Neurologia Japonica」に掲載されました。 研究について 【研究概要】 本論文では、医療観察法に基づく医療の現場で活用されてきたクライシスプラン(CP)について、その構造や作成方法、国内外の先行研究、一般精神科医療への応用可能性を整理しました。 クライシスプランとは、本人の状態を「安定」「注意」「要注意」の段階に分け、それぞれの状態でどのように対処するかを本人と支援者が一緒に話し合いながら作成する計画です。あらかじめ対応方法を共有しておくことで、自身の状態変化への気づきや早期対応につながります。 また、海外の先行研究では、クライシスプランが本人の同意によらない入院の減少や治療関係の改善、医療費削減につながる可能性が報告されています。本論文では、これらの知見を踏まえ、クライシスプランを権利擁護とリカバリーの観点から位置づけました。 本論文は、司法精神医療で培われた実践を一般精神科医療へ応用する可能性を論じたものであり、患者と支援者が協働しながらリカバリーを目指す支援のあり方として期待されています。 【本論文のポイント】 ① 本人と支援者が共に作る「私たち(We)の計画」 クライシスプランは、支援者が一方的に作成するものではありません。本人と支援者が対話を重ねながら合意形成を行う「共同意思決定(SDM)」のツールとして機能し、リカバリーを支援します。 ② 一般精神科医療への応用が期待 海外の研究では、クライシスプランの活用によって本人の同意によらない入院の減少や医療費削減につながる可能性が報告されています。日本においても、退院支援や地域移行支援、退院後支援などでの活用が期待されています。 ③ 効果的な活用のための5つのポイント クライシスプランを有効に機能させるためには、「完璧を目指さない」「本人の納得を重視する」「本人自身の言葉を尊重する」「日常的に活用する」「病状悪化を失敗ではなく成長の機会と捉える」といった視点が重要であることを整理しています。 【研究者のコメント】 ◆心理健康学科 野村照幸 教授 クライシスプランは、危機的状況を「決定」や「転換点」として捉え、患者と支援者が共に成長するためのロードマップです。近年、医療・保健・福祉分野でも関心が高まっていますが、病状管理ツールとしてのみ理解されることには注意が必要です。病状管理は目的ではなく、あくまで患者のリカバリー(自身の望む人生の実現)を支える手段として用いることが肝要です。本稿が、司法精神医療のみならず、一般精神科医療の現場においても、患者と支援者の協働による安心感の醸成に役立てば幸いです。 【原論文情報】 Nomura, T. Collaborative Condition Management Based on Crisis Plans: Collaborative Plan for Recovery Psychiatria et Neurologia Japonica 125(12): 1058-1065 2023 DOI:10.57369/pnj.23-150 論文URL:https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/english/125-12_P1058-1065_Teruyuki_NOMURA.pdf ※本英語版は、精神神経学雑誌に掲載された日本語論文の英語翻訳・掲載版です。引用の際は原著日本語論文をご参照ください。 【研究者情報】 新潟医療福祉大学 心理・福祉学部 心理健康学科 教授 野村 照幸 【問い合わせ先】 新潟医療福祉大学 入試広報部広報課 所在地:新潟県新潟市北区島見町1398番地 TEL:025-257-4459 【新潟医療福祉大学】 https://www.nuhw.ac.jp/ 全国でも数少ない、看護・医療・リハビリ・栄養・スポーツ・福祉・医療ITを学ぶ6学部16学科の医療系総合大学です。この医療系総合大学というメリットを最大限に活かし、本学では、医療の現場で必要とされている「チーム医療」を実践的に学ぶことができます。また、全学を挙げた組織的な資