2026年6月、日本銀行は政策金利を1.0%へ引き上げました。ゼロ金利政策の終了から段階的に進められてきた利上げは、新たな金融環境への転換点を迎えたと言えます。 政策金利の引き上げは、住宅ローン金利や事業用融資金利の上昇につながるため、不動産市場にとって非常に重要な変化です。特に中古マンション市場では、購入者の資金調達コストが上昇することで、住宅取得能力や投資採算性に影響を及ぼす可能性があります。 一方で、東京都の中古マンション市場は、これまで急激な価格上昇を背景に極めて高い流動性を維持してきました。しかし2025年以降は、高価格帯マンションを中心に在庫の積み上がりや販売期間の長期化など、市場には徐々に変化の兆しが現れています。 そこで今回は、政策金利の上昇が東京都23区の中古マンション市場へどのような影響を与えているのか、「販売期間」と「値下げ回数」という流動性指標を用いて検証します。 東京都23区全体では依然として高い流動性を維持 まず東京都23区全体(都心5区を除く一般住宅マーケットを含む)の動きを見ると、市場の基礎体力は依然として強いことが分かります。 出典:福嶋総研 売り出し開始から成約に至るまでの販売期間と、販売中に実施された値下げ回数を分析すると、2025年初旬までは販売期間・値下げ回数ともに減少傾向にありました。 これは、売主が価格を調整しなくても比較的短期間で成約していたことを意味しており、購入希望者が市場に十分存在していたことを示しています。 出典:福嶋総研 特に、政策金利が0.25%へ引き上げられた2024年中盤以降も、この傾向は大きく変化しませんでした。 つまり、当時の東京都23区では、住宅ローン金利の上昇を吸収できるだけの実需が存在しており、金利上昇が市場全体の流動性に与える影響は限定的だったと考えられます。人口流入の継続や住宅取得ニーズの高さに支えられ、実需マーケットは非常に底堅い動きを続けていたと言えるでしょう。 金利0.75%を境に売り手の姿勢に変化が現れた 一方で、市場には徐々に変化も見え始めています。 政策金利が0.5%となった2025年初旬以降は、販売期間・値下げ回数とも概ね横ばいで推移しました。つまり、金利がさらに上昇したにもかかわらず、市場は一定の流動性を維持していました。 しかし、政策金利が0.75%へ引き上げられた2025年末以降になると、状況は少しずつ変わります。 販売期間そのものは大きく悪化していないものの、値下げを実施する物件の割合が増加し始めました。 これは売主が従来のような強気価格では成約しにくくなり、市場価格へ歩み寄るケースが増えてきたことを示しています。 言い換えれば、「待っていれば売れる市場」から、「価格調整を行うことで売れる市場」へと、売主の行動が変化し始めているということです。 2026年6月に政策金利が1.0%へ到達した現在、この傾向はさらに進む可能性があります。 もっとも、現在の東京都23区全体の流動性は依然として歴史的に見れば高い水準にあります。そのため、市場全体が急激に悪化するというよりも、過熱していた市場が徐々に正常な状態へ戻っていく過程と捉えることもできるでしょう。 都心5区は一般住宅市場とは異なる動きを見せる 出典:福嶋総研 一方で、高価格帯マンションが集中する都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)では、より早い段階から市場の変化が確認されています。 出典:福嶋総研 販売期間と値下げ回数を分析すると、政策金利が0.25%へ引き上げられた2024年中盤以降、すでに販売期間の長期化と値下げ頻度の増加が始まっています。 この背景には、単純な金利上昇だけでは説明できない要因があります。 都心5区は、居住目的の購入者だけでなく、国内外の投資家や資産保有目的の購入者も多く参加する「実需と投資が混在するマーケット」です。 2023年から2025年にかけては、再開発への期待や海外投資マネーの流入、超低金利環境などを背景に価格が急騰しました。 しかし価格上昇のスピードが実需層の購買力を上回るようになると、購入できる層は徐々に限定されます。 その結果、供給が増え始めた局面では価格調整が必要となり、販売期間の長期化や値下げの増加として表面化していると考えられます。 つまり都心5区では、金利上昇だけではなく、価格上昇そのものが流動性低下の大きな要因となっている可能性があります。 湾岸エリアでは変化がさらに顕著に 出典:福嶋総研 この傾向は、東京都の湾岸エリアではさらに明確に表れています。 晴海・勝どき・豊洲・有明などでは、近年、新築供給や大型再開発への期待を背景に中古価格も大きく上昇しました。一方で、転売目的や資産運用目的の保有も多く、市場環境の変化を受けやす