映画『東京上空300メートル』のポスター 株式会社毎日新聞社は、長編ドキュメンタリー映画『東京上空300メートル』を製作しました。2026年10月からポレポレ東中野(東京都中野区)など全国で順次公開予定です。多くの映像作品を手がけてきた大墻敦(おおがき・あつし)監督との共同製作で、日米地位協定がもたらす「米軍特権」の実態を浮き彫りにし、その「正体」を考えます。動画配信に力を入れる新聞社は増えているものの、ドキュメンタリー映画の劇場公開を実現するプロジェクトは異例です。誕生した作品にご注目ください。 映画『東京上空300メートル』公式サイト 問われているのは、この国のあり方だ 本作は、東京・六本木の米軍施設「赤坂プレスセンター」と東京西部にある横田基地、そして基地が集中する沖縄を主な舞台として展開する。 第1章「日本の空は誰のものなのか」 東京都心で米軍ヘリの問題に迫った記者たちの調査報道を軸に描く。見えてきたのは、日本のヘリであれば許されぬ飛行実態だった。東京・町田市(1964年)や沖縄国際大(2004年)で起きた過去の事故なども織り交ぜながら、戦後81年を迎えても変わらぬこの国の姿をあぶり出す。 第2章「誰が犯人を逃がしているのか?」 日米密約の問題をひもとき、深刻な被害がなくならない米兵による性暴力と日本政府の姿勢を見つめる。 第3章「米軍基地は誰のためにあるのか?」 基地問題と向き合う市民らの思いに耳を傾け、終章「星条旗と日本人」につなげる。「日米同盟」の名の下、放置されてきたこの国の“当たり前”を問い直す。 取材班の大場弘行記者=©️2026 大墻敦・毎日新聞社 「春画と日本人」の大墻敦監督とタッグ 監督を務めるのは、「春画と日本人」(キネマ旬報ベストテン2018年文化映画第7位、第74回毎日映画コンクールドキュメンタリー映画賞ノミネート)、「スズさん 昭和の家事と家族の物語」(2022年)、「わたしたちの国立西洋美術館」(2023年)の大墻敦氏。毎日新聞の記者とともに、基地を巡る問題と向き合う市民運動の現場や、性暴力被害者らへの取材を約2年にわたって積み重ね、映画を完成させた。本作が監督4作目となる。 大墻敦監督「日米地位協定を考える人たちへ」 雨降る夜空を爆音とともに切り裂くように離着陸する米軍ヘリを初めて目の当たりにしたときの驚きは、今も胸に刻まれています。日米地位協定のもとで在日米軍に与えられた「特権」の正体は何なのか、安全保障と引き換えに何が黙認されてきたのか。本作が完成し劇場公開されることとなり、製作者としてとてもうれしく感激しています。日米地位協定について考えるすべての人たちへ、敬意を込めて本作を届けたいと願っています。 大墻敦(おおがき あつし) 1963年生まれ。主な生育地は千葉県船橋市。1986年一橋大学経済学部を卒業後、NHKに入局。プロデューサーやディレクターとして「新・電子立国」「文明の道」「新・シルクロード」「二重被爆 ヒロシマ・ナガサキを生き抜いた記録」「Brakeless JR 福知山線脱線事故」など。2019年から桜美林大学教授。 東京都心にある高さ約270㍍のビルより低く飛ぶ米軍ヘリ=©️2026 大墻敦・毎日新聞社 調査報道「特権を問う」とは 本作は、日米地位協定がもたらす実態を明らかにしようと2020年2月に始まった毎日新聞の調査報道「特権を問う」の内容を軸に、新たな取材を重ねて完成させたものだ。「特権を問う」では東京都心で約半年に及ぶ撮影を敢行し、米軍ヘリが日本のヘリであれば違法に当たる高度で繰り返し飛んでいる実態をスクープ。取材を続けて、首都圏における飛行実態なども明らかにした。 証拠映像を配信する新しいスタイルの調査報道に挑戦してきたことが、映画製作にもつながった。空の問題にとどまらず、地位協定に関わる幅広いテーマを追いかけ、100本を超える記事を送り出している。2022年に新聞労連ジャーナリズム大賞を受賞した。 日米地位協定 日米安全保障条約に基づき、在日米軍の法的地位や米軍が基地を管理・運営する権限などを定めている。28条ある。日本の法の規制を受けないさまざまな「特権」を米軍に与えており、全国知事会などが見直しを求めてきた。1960年の締結以来一度も改定されていない。 取材班デスク・銭場裕司プロデューサー「新聞社の映画製作 異例の挑戦」 映画のタイトルに用いた「上空300メートル」は、航空機が人口密集地で守るべき日本の最低安全高度のことです。しかし、日米地位協定に基づく特例法により米軍には適用されません。長編ドキュメンタリー映画の製作は、新聞社としては異例の取り組みになります。取材した情報をどのようにして届けるか、伝え方を模索する中での挑戦です。映画を通して、調査報道に