A.T. カーニー株式会社(東京都港区、日本代表:針ヶ谷 武文)は、データセンター市場におけるサプライチェーン課題を考察した論考「サプライチェーンはデータセンターブームの足かせになっていないか?」を公開しました。 本稿では、データセンターの設備容量が足元の19GWから2030年には40GWへと倍以上に拡大する見通しである一方、発電機や変圧器を含む主要設備のリードタイム長期化などが、データセンター関連プレイヤーの収益化のタイミングや、PE投資先における価値創出に影響していることが示されています。 具体的には、発電機のリードタイムはパンデミック前の20週間未満から、現在では40〜85週間に達するケースがあり、変圧器のリードタイムも5週間から70週間超へと伸びたとされています。こうした供給制約に対応するため、本稿は、サプライヤーとの関係を「取引中心」から「戦略的パートナーシップ」へ移行し、プロジェクト単位ではなくポートフォリオ単位で管理する必要性を指摘しています。 2030年40GWへ倍以上、建設市場は3,590億ドル見通し—供給制約への対応が課題に 世界のデータセンター建設市場は、2023年の2,180億ドルから2030年には3,590億ドルへ拡大する見通しです。設備容量も足元の19GWから2030年には40GWへと倍以上に拡大するとされています。 論考では、この予測について、同期間に容量を10倍に増やす計画を掲げる企業もあることを踏まえると、控えめである可能性にも言及しています。また、Nvidiaは今後4年間でAI用途のデータセンター刷新だけでも約1兆ドルが投じられると見込んでおり、ハイパースケーラーや企業顧客が大規模で高性能な建設案件を求める中で、バリューチェーン上のプレイヤーには大きな機会が生まれているとしています。 一方で、供給制約は足かせとなっており、PE投資先における価値創出も制限されてきたと論考では指摘されています。そのため、PEなどの投資家にとっては、エンドツーエンドのサプライチェーン能力を強化し、市場環境の変化を先回りして捉えながら機動的に対応できる体制を整えることが有効とされています。 発電機は40〜85週間、変圧器は70週間超—リードタイム長期化が収益化を遅らせるリスクに 供給制約の影響は、主要設備のリードタイムに表れています。論考によると、発電機のリードタイムは、パンデミック前には20週間未満だったものが、現在では40〜85週間に達するケースがあります。変圧器についても、リードタイムは5週間から70週間超へと伸びたとされています。 こうした変化は、供給網の取り合い、長期化するリードタイム、資金余力の限られた市場における高額な前払いを招いていると論考では説明されています。また、これらの課題は、収益化のタイミングを遅らせるだけでなく、契約上のペナルティや評判毀損といったリスクにもプレイヤーをさらしていると指摘されています。 そのため、需要が拡大する局面では、サプライヤーとの関係を案件ごとの取引にとどめず、複数年の時間軸で需要を捉え、カテゴリ単位で管理する視点が重要になります。 5つの次元で転換が必要、14件・400台超を束ねる調達が需要側の交渉力を高める可能性 論考は、需給が歪んだ市場で競争力を高めるには、プロジェクト単位の管理からポートフォリオ単位の管理へと引き上げることが求められるとしています。具体的には、先見性、調達モデル、サプライヤーとの関与モデル、顧客との関与モデル、社内ケイパビリティという5つの次元での転換が必要とされています。 調達モデルについては、プロジェクト単位の購買から、ポートフォリオに基づくカテゴリ別ソーシングへ移行することが示されています。論考では、14件のプロジェクトを束ねて調達すれば、発電機は400台超になり得るため、OEMが生産能力要件を満たすための追加シフトを割り当てるインセンティブを持ちやすくなると説明しています。 また、サプライヤーとの関与については、取引型購買からグローバルな戦略的関係へ転換し、トップ同士で直接対話する「トップ・トゥ・トップ」の関係を構築することが必要とされています。顧客との関与についても、プロジェクトベースの関与から長期の共同計画へ移行し、将来を見据えた需要シグナルや機器構成について、顧客・サプライヤー双方と協働することが重要とされています。 論考について 論考名:「サプライチェーンはデータセンターブームの足かせになっていないか? URL:https://www.jp.kearney.com/issue-papers-perspectives/are-supply-chains-limiting-your-ability-to-capitalize-on-