特定非営利活動法人 日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)(所在地:東京都港区、代表理事:乗竹亮治)のプラネタリーヘルスプロジェクトおよびアドバイザリーボードメンバー有志一同は、政権の次期「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」および「成長戦略」に向けた共同声明「地球と人の健康を同時に守る~気候危機を健康・経済・成長の『機会』に変える日本型プラネタリーヘルス戦略~」を公表しました。 ■声明の背景と重要性 気候変動・生物多様性の損失・環境汚染という「三つの地球規模の危機(トリプル・プラネタリー・クライシス)」は、日本経済と国家財政の持続可能性を左右する構造的リスクであると同時に、21世紀における健康・経済・社会を同時に高める最大の「機会」でもあります。本声明は、自然環境を単に「保護する対象」とみなす発想から、人々の健康と社会の繁栄を支える「必須の基盤」と捉え戦略的に投資する発想への転換――すなわち「地球と人の健康を同時に守る」プラネタリーヘルスへの転換を提起するものです。 ランセット・カウントダウンの2024年報告によれば、日本では2024年の暑熱曝露により14.2億時間の潜在労働時間が失われ、潜在所得損失は約7.9兆円(GDPの約1%に相当)に達したと推計されています。また、2026年の中東情勢の緊迫化、とりわけホルムズ海峡の事実上の閉鎖により、現代医療の石油化学製品・輸入物資・電力網への多層的依存という構造的脆弱性が現実のものとなりました。 国際的には、COP30で「ベレン保健行動計画(BHAP)」が採択され、第77回世界保健総会では気候変動を「21世紀最大の健康脅威の一つ」と位置づけ、各国に気候レジリエントかつ低炭素な保健医療システムの構築を求めています。日本政府もBHAPを支持し、「健康の公平性」「アジア太平洋地域における強靱なシステム構築」「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」を重点分野として表明しました。 ■5つの主要提言 政府が掲げる「責任ある積極財政」「危機管理投資」「攻めの予防医療」「17の戦略分野」等を環境と健康の統合視点から強化すべく、以下の5つの提言を行っています。 ガバナンスの再構築 気候・健康課題をマクロ経済・国家の持続可能性を左右する中核課題と再定義し、経済財政諮問会議の下に政府横断的な統合評価体制を構築する。次期気候変動適応計画に「健康影響評価(HIA)」と「すべての政策に健康の視点を組み込むこと(HiAP)」を明記し、縦割りを横断する政策調整を実現する。 危機管理投資としてのサプライチェーン強靱化と病院グリーン化 医療物資・電力網への依存と老朽病院問題を国家ガバナンス上の重大リスクと位置づけ、医療機関の脱炭素化・ZEB Ready推進を「危機管理投資」として明確化し、4省庁連携のワンストップ支援とまちづくり連動の施設整備を進める。 防災庁の事前防災機能と次期気候変動適応計画の連動 熱中症・感染症・メンタルヘルス等の健康適応策を次期計画に実質的に組み込み、防災庁の機能と制度的に連動させる。自然を基盤とした解決策(NbS)やグリーンインフラを国土強靱化計画に明示し、国と地方の取り組みをシームレスに接続する。 成長戦略・攻めの予防医療への実装 環境・健康データの統合による予防医療の高度化、健康経営での暑熱適応策の評価指標化、高齢労働者の就労継続支援を推進する。「17の戦略分野」にワンヘルスに基づく環境制約要件を組み込み、新技術立国政策と国際ルール形成を同期させる。 財政の持続可能性の確保 気候・健康リスクを財政リスクとして明示的に評価し、健康・医療・介護の適応投資を骨太の方針・成長戦略・次期計画に横断的に位置づける。単年度主義からの転換を踏まえ、複数年度予算・別枠投資枠と自治体の脱炭素取組の一体的評価により、将来の医療費高騰を未然に防ぐ。 🔳担当者・アドバイザリーボードメンバーによるコメント 本共同声明に対して、特定非営利活動法人日本医療政策機構 副事務局長 菅原丈二は以下のようにコメントしています。 今回の共同声明は、気候危機を単なる環境問題として捉えるのではなく、マクロ経済・国家財政・安全保障を左右する中核課題として再定義し、経済・財政の中枢である経済財政諮問会議や財務省を主要なターゲットとして位置づけた点に大きな意義があります。 2026年はホルムズ海峡をめぐる情勢緊迫化により医療物資の供給不安が現実のものとなり、記録的な猛暑が続く中で熱中症による救急搬送が過去最多水準に達するなど、気候と健康の危機が同時進行しています。ヘルスケアセクターが『環境に配慮する』存在にとどまらず、『環境再生に積極的に貢献する』存在へと転換す