GMOインターネットグループのGMOペパボ株式会社(代表取締役社長:佐藤 健太郎 以下、GMOペパボ)で、インターネットに関する新技術の創造と実践に取り組む研究開発組織「ペパボ研究所」(URL:https://rand.pepabo.com/)と、国立大学法人横浜国立大学 太田研究室(太田 裕貴 教授)の共同研究の成果が、国際学術誌「Advanced Intelligent Systems」に採択され、2026年6月9日(火)(日本時間)に公開されました。本研究では、声を出さずに言葉を認識するための、手に装着して使う柔らかい筋電位(EMG)(※)インターフェースを開発しました。 (※)筋電位(EMG:Electromyography):筋肉が活動する際に生じる微弱な電気信号。本研究では口周辺の筋活動を計測するために用いています。 ■本研究のポイント ・声を出さずに、指先を口元に近づけるだけで言葉を認識できる、手装着型の柔らかいウェアラブルデバイスを開発 ・顔や口元にセンサーを常時貼り付けるのではなく、必要なときだけ使う「オンデマンド型」の方式を提案し、装着負担・見た目の違和感・プライバシー面の懸念を低減 ・深層学習により平均97.2±1.3%の高精度で単語を識別。無発声コマンドによるドローンのリアルタイム制御も実証 【研究の背景と目的】 GMOペパボは、「インターネットで可能性をつなげる、ひろげる」というミッションのもと、サービスの提供を通じてインターネット上での表現活動を行う人々を支援しています。ペパボ研究所では、機械学習・AI、自然言語処理、ヒューマンインターフェースなどの研究開発を通じて、人々の創作活動やコミュニケーションをより自由にする技術の創出に取り組んでいます。 一方、横浜国立大学 太田研究室は、ソフトマテリアルや液体金属などの先端導電性材料を用いた、人への親和性が高い柔らかなウェアラブルデバイスの研究開発を進めています。 近年、音声認識技術はスマートフォン、スマートスピーカー、ロボット、AR/VRなど多様な場面で利用されています。しかし音声による入力には、周囲に発話内容が聞こえてしまうプライバシー上の懸念や、騒音環境で認識精度が低下する課題があります。また、声を出すことが難しい状況や、公共空間・医療現場・作業現場など、発話そのものが適さない場面も存在します。 こうした課題に対し、発声を伴わずに口周辺の筋活動などから言葉を認識する「サイレント音声認識(Silent Speech Recognition:SSR)」が注目されています。一方で従来のSSR技術では、顔や口元にセンサーを常時装着する必要がある場合が多く、装着負担、見た目の違和感、日常利用における心理的ハードル、信号取得の安定性などが課題となっていました。本研究は、これらの課題を解決し、プライバシーに配慮した新しいコミュニケーション手段およびヒューマン–マシンインターフェースの実現を目指すものです。 【研究詳細・成果】 本研究では、サイレント音声認識の実現に向けて、手に装着して使用する柔らかい筋電位(EMG)インターフェースを開発しました。顔や口元にセンサーを常時貼り付けるのではなく、必要なときだけ指先の電極を口元に近づけて筋電位信号を取得する「オンデマンド型」の方式を提案した点が特長です。これにより、装着性・プライバシー性・日常利用のしやすさを高めることを目指しました。 発声しなくても、言葉を発しようとする際には口周辺の筋肉がわずかに活動します。本デバイスはその筋電位信号を計測し、機械学習によって単語を識別します。デバイスには、指の曲げ伸ばしや装着時の変形に追従するため液体金属配線を用い、口元に接触する電極には透明な柔軟FPC電極を採用。全体を柔らかいエラストマー材料で封止することで、手指の自然な動きを妨げにくく、安定して信号を取得できる構造を実現しました。 取得したEMG信号を深層学習モデルで解析した結果、平均97.2±1.3%の認識精度を達成し、発声を伴わない口周辺の筋活動から単語レベルの情報を高精度に識別できることを示しました。さらに応用可能性を示すため、無発声コマンドによるドローンのリアルタイム制御を実証。騒音環境や、声を出しにくいプライバシー性の高い環境においても、音声に代わる直感的な操作インターフェースとして利用できる可能性を示しました。 ■参考図 ■論文情報 掲載誌 Advanced Intelligent Systems(Wiley) 公開日 2026年6月9日(火)(日本時間) DOI 10.1002/aisy.70440 URL:https://advanced.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/a