株式会社CEメディアハウスは、『朝のピアノ 或る美学者の「愛と生の日記」』(2025年3月刊)を、このたび重版いたしました。2018年10月に韓国で『아침의 피아노』(アチメ ピアノ)初版が発売されて以来、各界の著名人が読んで感銘を受けたことが評判になっています。 余命を知ったとき、残りの日々をどう生きるか。日常がシャッターを下ろすように中断されると知った時に……残ったのは「愛」だった。 韓国の哲学アカデミー代表も務めた美学者キム・ジニョン氏は癌を宣告される。本書は天に召される3日前、意識混濁の状態に陥るまでの日々を記録した散文集だ。死に対する不安を率直に綴りながらも、世界のささやかな美を発見し、周囲の人たちを愛し、人間としての威厳を最後まで保ち続ける記録である。 〈雨降りの日、世界は深い思索に濡れる。そんなときは、世界が愛を待つ気持ちでいっぱいだということを知っている。わたしがどれほど世界を愛しているかも〉 〈もっと長生きしなければならないのは、もっと生きながらえるためではない。後回しにしてきたことに対する義務と責任を遂行するためだ〉 【本書を読んだ著名人の言葉】 ◆しばらく外国にいたとき、この本を1日いちど、3回読んだ。毎日読んでもいい本 ノーベル賞作家 ハン・ガン氏 ◆すごく胸に刺さって、思わず涙が出てきました。 作家 小川糸氏 『別冊暮らしの手帖 あの人の読書案内』 ◆生の最後の旅路を、このように歩める人は幸いなるかな。 文化人類学者 石井美保氏 『朝日新聞』2025年5月10日 ジェジュン氏がインスタライブ(2023年3月14日)で紹介した他、オーディオブックの朗読を務めた女優イ・チョンア氏は〈ひとつの季節を生きるにも、草たちはこれほどまでに実直で完璧に、生を生きる〉という一節に感銘を受けたと語る。 【内容紹介】 〈1〉 朝のピアノ。ベランダで遠くを眺めながら、ピアノの音に耳を傾ける。わたしはこれから何をもってしてピアノに応(こた)えられるのだろうか。この質問は妥当ではない。ピアノは愛である。ピアノに応えられるもの、それも愛あるのみだ。 〈3〉 いまわたしに必要なものは、病(やまい)に対する免疫力だ。免疫力は精神力。最高の精神力、それは愛である。 〈8〉 突として心がぽきぽき折れる。 秋日の枯れ木のように。 〈10〉 イウォンを会社に送り届けた帰り道、道端に車を停める。煙草をくゆらせながら朝の風景を眺める。駅前の駐車場はがらがらだ。毎日わたしの古びた車を停めていた場所。わたしを日常に送り出し、夜遅くまた戻ってくるのを待ってくれていた場所。その空っぽの場所で、心がまたもぽきっと折れる。 〈11〉 どうすればすべてを守れるだろうか。 自分を守れるだろうか。 〈12〉 昨晩、Cがメールを送ってきた。 「先生はいつもおっしゃっていましたよ。希望のない場所に希望はあるのだと」 〈15〉 今日はジュヨンがアトリエに行く日。外出をためらう彼女の背中を押す。わたしにせっつかれて、とうとう鏡の前に座ったジュヨンの姿を眺める。小さく丸い体つき。いつでも笑みを絶やさず、どんなときも大笑いして重い世の中を明るく一蹴する、笑いの塊のような体。 わたしは笑顔が素敵なこの女性から旅立つことができるのか。 【プロフィール】 著者:キム・ジニョン 哲学者/美学者 高麗大学ドイツ語独文学科と同大学院を卒業し、ドイツのフライブルク大学大学院(博士課程)留学。フランクフルト学派の批判理論、特にアドルノとベンヤミンの哲学と美学、ロラン・バルトをはじめとするフランス後期構造主義を学ぶ。小説、写真、音楽領域の美的現象を読み解きながら、資本主義の文化および神話的な捉えられ方を明らかにし、解体しようと試みた。市井の批判精神の不在が、今日の不当な権力を横行させる根本的な原因であると考え、新聞・雑誌にコラムを寄稿。韓国国内の大学で教鞭をとり、哲学アカデミーの代表も務めた。バルト『喪の日記』の韓国語翻訳者としても知られる。 翻訳者:小笠原藤子 上智大学大学院ドイツ文学専攻「文学修士」。現在、慶應義塾大学・國學院大學他でドイツ語講師を務める傍ら、精力的に韓国語出版翻訳に携わる。訳書にチョン・スンファン『自分にかけたい言葉 ~ありがとう~』(講談社)、リュ・ハンビン『朝1 分、人生を変える小さな習慣』(文響社)、イ・ギョンヘ『ある日、僕が死にました』(KADOKAWA)、ケリー・チェ『富者の思考 お金が人を選んでいる』(小社)など多数。 【書誌情報】 タイトル:朝のピアノ 或る美学者の『愛と生の日記』 著者:キム・ジニョン 訳者:小笠原藤子 判型・ページ数:四六判・272ページ 定価:2420円(税込み) ISBN:978-4-484-22127-4 発売時期:2025年3月