2026年6月25日 特定非営利活動法人 肖像パブリシティ権擁護監視機構 2025年度 生成AI時代における肖像権・パブリシティ権等の侵害疑義事案の実態を調査 〜2025年度実態調査結果。生成AIによる侵害手法多様化、業界174社調査で深まる対応課題〜 【調査概要】 2025年度肖像権等に関する侵害疑義実態調査を実施いたしました。 近年、生成AIの普及によりSNS等での肖像・声の無断利用がさらに広がっています。2026年4月には法務省において「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会」が発足するなど、肖像権・パブリシティ権の保護をめぐる議論が活発化しています。 特定非営利活動法人 肖像パブリシティ権擁護監視機構は、こうした状況の中、昨年度に引き続き業界の実態把握と経済的損失の規模の可視化を目的として本調査を実施いたしました。 ■調査期間:2025年4月〜2026年3月 ■調査方法:インターネット調査、アンケート・ヒアリング調査、削除対応の実証 ■調査対象:SNS(TikTok、X、YouTube)、画像生成AIプラットフォーム(sea art AI、PixAI)、芸能事務所、関連企業・団体 【インターネット調査と削除対応の実証】 主要SNS及び画像生成AIプラットフォームにおける「肖像」「声」におけるパブリシティ権の侵害疑義事案の投稿や掲載について継続調査を実施いたしました。主要SNS(TikTok、X、YouTube)における侵害疑義投稿数は延べ4万件以上、閲覧回数は約3.35億回に上ることが確認されました。声の無断利用については、海外の現地アカウントによる多言語の冒用事案も多数散見されています。画像生成AIプラットフォームでは、芸能人等の肖像を学習させたモデル(LoRA等)の無断作成・公開が引き続き確認されました。 加えて本年度は、侵害の根源となるモデル自体を削除対象とする実証を実施いたしました。画像生成AIプラットフォームにおいて某俳優の肖像を使用したモデル(LoRA等)20件を対象に、芸能事務所のご協力のもと2026年1月から2月にかけて削除申請を行い、削除率100%(20件全件削除完了)を達成いたしました。 ただし、削除完了後も同一人物のモデルが新たに投稿される事案が確認されており、一度の削除では終わらず、再投稿への迅速な対応を含む定期的なモニタリング体制の構築が不可欠であることも明らかになりました。 【本調査により確認できた範囲における経済的損失の試算(主要SNS)】 SNS上の肖像権・パブリシティ権侵害については、損害賠償単価を示す直接的な過去事例が存在しないため、業界初の試みとして、2つの異なる観点から多角的に経済的損失を試算いたしました。 一つ目は、通常受領すべき金銭相当額(利用料相当額)の推定を基に、1投稿あたり本来支払うべき利用料を投稿件数分積み上げる考え方。二つ目は、SNSでの総閲覧回数に同等のリーチを広告で買った場合の換算値で算定する考え方です。 その結果、本調査で捕捉した主要SNS上の侵害疑義投稿を前提とした場合、SNS上における肖像権・パブリシティ権侵害による経済的損失は、確認できた範囲だけでも約20〜45億円規模に上るものと試算されました(本機構による参考試算)。 もっとも、本試算は、肖像権・パブリシティ権侵害の全体規模や、裁判上の損害賠償額を示すものではありません。具体的には、①投稿数・閲覧回数が、調査期間(2025年4月〜2026年3月)内の各調査日時点で把握した値であって、調査後も増加し得ること、②調査対象が本機構において確認できた主要SNS上の投稿を中心としていること、③対象となる権利者・事案が本機構の調査対象に含まれるものに限られること、④算定対象が投稿件数および閲覧回数を基礎とする利用料相当額・広告換算額に限られることから、未確認投稿、削除済み投稿、再投稿・二次転載、調査対象外サービス上の事案、リアル空間・EC上の無許諾商品、声優・音声AI関連被害の全体、ブランド毀損、調査・削除対応コスト等は含まれていません。 したがって、今回の約20〜45億円は、肖像権・パブリシティ権侵害の全体像のうち、本調査で可視化できた一部についての保守的な参考試算であり、実際の経済的影響はこれを大きく上回る可能性があります。 【アンケート・ヒアリング調査】 業界各事務所にアンケートを配布し、174社から有効回答を得て集計いたしました。 調査の結果、侵害疑義事案を「全て把握」または「概ね把握」と回答した事務所は約28%にとどまり、完全な把握はリソース的に困難との声が多く確認されました。業界全体として侵害疑義事案の認識が十分に進んでいない実態が浮き彫りとなっています。 対応ガイドラインについては