明治27年(1894年)の創業以来、130年以上にわたり北海道・旭川のインフラを支え続けてきた荒井建設株式会社。近年では国土交通省「インフラDX大賞」優秀賞を受賞するなど、伝統を守りつつ新しい技術への挑戦を続けています。 同社は世の中で「カーボンニュートラル」が大きく騒がれる前から、環境問題を地方の中小企業であっても避けては通れない重要な経営課題として捉えてきました。 今回は取締役社長の荒井 克典 様に、燃料触媒『SLOW』の導入経緯と、その裏にある熱い想いを伺いました。 なぜ地方のゼネコンが「環境」を語るのか?——すぐそこにある、1.8倍の水害リスク Q. なぜ、日本のカーボンニュートラル宣言(2020年)よりも前から環境問題を「経営課題」として捉えていたのですか? 荒井克典様(以降 荒井) 実は、気候変動のリスクってすぐ目の前にあるんです。 過去の統計を見ると、この旭川では「1日に30mm以上の雨が降る回数」が、1970年代と比べて約1.8倍に増えています。明らかに雨が降りやすい気候になっている。 雨が多くなれば、私たちが守ってきたインフラが水害に直面するリスクが劇的に高まります。我々はそれを守る仕事をしている。非常に責任は重いです。 一方で、インフラの再整備には非常にお金がかかります。農業用のインフラは老朽化が進んでおり、ここ10年以内にすべて改修しようとすると、国全体で1兆円以上かかる試算です。これほどの巨額コストをかけ続けるのは不可能です。だからこそ、一つの建設会社として、気候変動のスピードを少しでも緩めるアクションを起こさなければならないと考えました。 さらに、原油高騰と資材価格の上昇が追い打ちをかけています。これは予測不可能なリスクであり、経営者として難しい判断を迫られます。 「環境に配慮しなければインフラがもたない。しかし、多額の環境投資に回す予算はない」 もし、環境対応によってコストダウンができるなら、一石二鳥の正しい事業防衛になります。私たちが『SLOW』を導入した背景には、こうした極めて現実的な経営判断がありました。 Q. 数ある環境への取り組みの中で、なぜプロスポーツチームである「ヴォレアス」とタッグを組んだのですか? 荒井 2021年にヴォレアスから「VOREAS GREEN DEAL宣言」が出されました。「プロスポーツチームが環境対策もしっかりやる」という組み合わせが、まず面白いなと。 彼らの先を見据えた具体的な取り組み姿勢に直感的に共感し、「一緒に何か面白いムーブメントを起こしたい」と思ったのが始まりです。 VOREASグリーンディール宣言とは VOREAS GREEN DEAL宣言は、我々VOREASがスポーツチームとして活動してきた中で、違和感を抱き、課題意識を持った「経済」、「環境」に関わる問題の解決へと向かっていくための宣言です。宣言内容についてはこちら 「理想と現実のギャップ」——失敗から学んだスピーディな方針転換 Q. 最初から導入はスムーズにいったのでしょうか? 荒井 いいえ、現実は甘くありませんでした。 建設業として最も効率的な環境対策は「大量に消費する燃料自体の削減」です。そこで、まずは現場の工事用重機や車両の燃料に『SLOW』を添加するトライアルからスタートしました。 しかし、現場の社員からは強い不安と懸念の声が上がりました。 我々は自社で重機を保有せず、レンタル機械を使用しています。現場からすれば「信頼性が確立されていないものを入れて、万が一機械が壊れたらどう保証するんだ」となるのは当然です。現場は決してウェルカムな状態ではありませんでした。 さらに、現場は日々環境が変わるためデータのばらつきが大きく、明確な効果を証明することが難しかったのです。 Q. その障壁をどのようにクリアしたのですか? 荒井 ここで諦めるのは簡単ですが、私は諦めたくありませんでした。バレーボールの試合で、ピンチの局面でも一球一球泥臭くボールを拾い続ける選手たちの姿と同じです。「いつか必ず、最適な使い道が見つかるはずだ」と。 どこかで一つでも「上手くいった確実な事例」を示さなければ、社内の納得感は絶対に生まれません。そこで私は、社内の薦めもあり稼働環境が一定でデータがブレない「本社のボイラー設備」へと、活用先をガラリと切り替える方針転換を即座に決断しました。 年間約60万円のコストダウン。数字が証明した「痛みのない環境経営」 Q. ボイラー設備へ切り替えた成果はいかがでしたか? 荒井 複数年のデータを検証し、明確な「結果」が数字として表れました。 最も寒さが厳しい12月から翌年2月までの85日間で、重油の使用量が4,414 ℓ削減されたのです。 年間ベースで見ると約9,000 ℓの燃料削減です。SLOW