外来で「先生、いい先生どこにいますか?」と聞かれて、言葉に詰まる。 実は、医師でも自分の専門・自分の地域の外のことは、案外知りません。 一人ひとりの頭の中には「あの先生は信頼できる」という“宝の地図”があるのに、それぞれの引き出しにしまわれたまま、つながっていない――。 株式会社NYAUW(本社:東京都港区/代表:井手 武・眼科医)は、その地図を医師どうしで一枚に重ね合わせる「紹介先ネットワーク」( https://clinic-specialty.com )を公開しました。 患者情報は一切持たず、紹介元は匿名。医師だけの招待制で、地域で頼られる“ちゃんとした専門医”の専門性を、全国から見えるようにします。 ■ 課題と背景――知識は、ある。でも流れていない 医師は長い時間をかけて「病気の治し方」を学びます。けれど「日本のどこに、どんな信頼できる先生がいるか」という地図は、学校では教わりません。現場で何年も働き、人づてに少しずつ集めるしかない。 そうして出来た貴重な地図は、その先生一人の頭の中だけにしまわれます。 • 隣の先生の頭には別の地図がある。全部を足せば日本一くわしい「信頼できる医療の地図」になるのに、バラバラだから誰も全体を使えない。 • 引っ越し・転勤・専門外――人が動くたびに、個人の地図は通用しなくなる。一歩外に出れば、また白紙。 • 「ネットで調べれば」と言うけれど、星の数では「本当の専門家か」「説明はていねいか」という肝心なことは伝わらない。医師が分からないものを患者さんが探すのは困難で、Drショッピングにつながり社会保障費の負担にもなります。 • 昔ながらの「人づて」も細くなり、いまや「たまたま知り合いがいるかどうか」という運任せになっている。 問題は、医師が怠けているからではありません。 知識をつなぐ仕組みが、この世になかっただけ。だとすれば、つなぐ場所さえ用意すれば、すきまは埋まります。 実は私たちは、この課題に2021年8月、一度挑んでいます。「患者さん紹介先登録プロジェクト」です。 けれど「10年変わらなかったストレス」は、その後も消えなかった。続けてもらうにはまだ重く、安心して持ち寄れる設計にも、もう一歩届いていなかったからです。 あれから5年。それでも「なんとかしたい」という思いは少しも変わらず、むしろ強くなって、今あらためて作り上げました。 ■ これは「名医データベース」ではありません 「紹介先の地図」と言うと、よく「全国の“神の手”ランキングですね」と誤解されます。違います。 厚労省は専門医を、ざっくり「その分野の標準的な医療を、きちんと提供できる、信頼される医師」と定義しています。 日々の紹介の大半は、“神の手”でなくても、この確かな専門医療できちんとカバーできるもの。引っ越し先で同じ治療を続けたい、専門外の症状をその分野の専門医に診てほしい――そんな、ごくふつうの、でも大切な紹介です。 足りないのは「実力」ではなく、「その実力を、必要な人に見えるようにする仕組み」だけ。私たちが作るのは、順位をつける格付けではなく、すでにある実力にそっと光を当てる“可視化”です。 ■ 特長 ① 患者情報を、そもそも持たない いちばん固い金庫は、中身が空っぽの金庫です。紹介状の文面を貼り付けても、抜き出すのは「施設名・診療科・医師名」だけ。患者情報には構造として手を伸ばさず、集めない・保存しない・送らない。 ② 紹介元は、誰にも見せない(匿名) 「誰がどこへ紹介したか」は匿名集計だけ。自分の紹介が他人に知られることはありません。だから安心して持ち寄れる。 ③ 医師だけの、招待制の輪 入口は既存メンバーからの招待のみ。招待リンクは厳密に1回きりで、ばらまけません。業者の飛び込みも、なりすましの大量登録も入口で止まる。信頼は「誰が出したか」で決まるからです。 ④ 与えた人が、受け取れる(give-to-get) 自分も紹介先を登録した医師が、みんなの地図を検索・閲覧できる。「見るだけのタダ乗り」で地図が枯れない、フェアな仕組みにしています。 ⑤ 「動いている」は見せ、一人ひとりは守る 誰でも見られる公開ページ( https://clinic-specialty.com )に出すのは、登録数・カバー都道府県の数字と、県が色づく地図だけ。施設名も場所も「誰が出したか」も公開しません。 ■ 5年間、変わらなかったこと 私たちがいちばんお伝えしたいのは、新しい技術のことではありません。 「医師が紹介先に困る、このすきまを埋めたい」という思いが、5年経っても1ミリも変わらなかった――そのこと自体です。 2021年に最初のプロジェクトを立ち上げたときの問題意識(医師でも専門外・地域外は一般の方と情報レベルが変わらない/ネット