株式会社想ひ人(本社:東京都中野区、代表取締役:金子萌)は、公益財団法人トヨタ財団 2025年度特定課題「先端技術と共創する新たな人間社会」の共同研究プロジェクトとして、「先端的AI相談に基づく、ハイブリッド型孤独・孤立対策の設計原則と制度的含意に関する実証研究」(助成番号:D25-ST-0092)が採択され、2026年5月1日より3年間(2029年4月30日まで)の研究プロジェクトを本格始動しました。助成金額は800万円です。 本研究は、介護・障害・医療など福祉領域において、必要な制度・支援につながれずに孤独・孤立や複合的困難を深めていく「制度のはざま」「制度未接続」の状態にある住民に対し、AIによる利用可能制度の網羅的な抽出・提示と、人による伴走支援を組み合わせたハイブリッド型支援モデルが、住民の制度接続をどの程度改善できるかを問うものです。AI相談・有人SNS相談・既存窓口という3つの支援チャネルの有効性と限界を中立的に比較検証し、行政の相談DXにおける設計原則(AIと人の役割分担)と、AI導入による住民の自己決定や行政の責任の曖昧化などの規範的・制度的含意を提言します。研究成果は政策提言・自治体向けガイドラインとして広く社会に公開します。 ■ 研究の背景:「制度はあるのに、必要な人に届いていない」という構造的課題 代表 金子萌は、17歳の冬から父親の若年性レビー小体型認知症(パーキンソン症状を伴う)の介護を母とともに続けてきた元ヤングケアラー、現ダブルケアラーです。介護家族として14年間、複数の制度の窓口に通う中で、「制度はあるのに、必要な人に届いていない」という構造的な問題に直面してきました。 介護・障害・医療・福祉領域では、医療保険、介護保険、障害福祉、自治体独自施策、年金、税控除など、利用できる制度が多岐にわたります。しかし制度は縦割りで分散しており、本人や家族が自分に該当する制度を網羅的に把握することは極めて困難です。その結果、知らなかったために取り損ねた支援、申請しなかった制度、たどり着けなかった窓口が積み重なり、必要な支援に「未接続」のまま時間が過ぎていきます。 この「制度のはざま」「制度未接続」の状態は、当事者をさらに社会から孤立させ、孤独感を再生産する構造的要因となります。本研究は、先端的AI技術による制度横断的なナビゲーションと、人による伴走支援を組み合わせることで、この「制度未接続」を解消する道筋を実証的に明らかにします。 ■ 支援が必要な人ほど、自ら窓口に辿り着けないという現実 「制度未接続」を生み出すもうひとつの構造的要因は、支援を最も必要としている人ほど、自ら相談窓口に辿り着けないという現実です。当事者の中には、自分が支援対象とは思っていない、相談する余裕がない、相談先がわからない、相談自体に強い心理的負担を感じる、といった様々な背景を持つ層が存在します。 行政側もこの課題を認識しており、相談DX(デジタル化)の必要性が議論されていますが、具体的にどの技術を、どの層に、どう組み合わせれば有効なのかについての実証データは限られています。本研究は、この空白に対して、住民側と支援者側の両面からデータを集め、中立的な検証を行うものです。 ■ 堺市実証から本研究へ:多チャネル支援基盤の発展と深化 株式会社想ひ人は、2025年度(令和7年度)、大阪府堺市の「公民連携実証プロジェクト推進事業」(テーマ:孤独・孤立対策)に採択され、堺市・株式会社想ひ人・株式会社Empathy4uの三社連携協定として、孤独・孤立対策のための多チャネル相談支援基盤の実証を行いました。本実証は2026年3月31日に完了し、その総括報告は2026年5月12日付のプレスリリースで公表しています。 堺市での「LINE公式アカウントを起点とした、AIによる窓口案内・福祉特化AIによる自動相談・福祉専門相談員による有人相談」という実証知見を元に、より厳密な科学的検証手法と、複数自治体での比較検証によって、AIと人のハイブリッド支援の設計原則を実証的に明らかにしていきます。 本研究では地域包括支援センター等の支援者側データも組み合わせることで、住民の側と支援者の側の両面から「制度未接続」の発生段階を可視化することが特徴です。 ■ 研究の問い:制度接続プロセスの可視化と、AIと人の最適な役割分担 本研究は、以下の問いに取り組みます。 (1) AIによる利用可能制度の網羅的抽出は、どの程度の精度で実現可能か 介護・障害・医療・福祉領域に存在する多様な制度(医療保険、介護保険、障害福祉、自治体独自施策、年金、税控除等)について、住民の個別状況からAIがどの程度網羅的かつ正確に利用可能制度を抽出できるかを、社会福祉士等の専門職による独立判定と比較検証