日本三大秘境の一つとされる宮崎県椎葉村には、世界農業遺産に認定された焼畑農法や、山の神を敬う狩猟文化、山菜や椎茸など山の恵みをいただく食文化など、人と自然が共存し育まれてきた価値観が残っています。 私たちは、この椎葉村の価値観を未来へつないでいくため、食・交流・滞在を通じてその世界観を体感できる拠点づくりに取り組みます。 2026年7月より、レストラン「のさり」、スナック「Nava」を順次開業し、秋には滞在施設「里山游巣」を開業予定です。 椎葉村の暮らしや文化に触れることを通じて、一人ひとりが自然との関わりや自らの生き方を見つめ直し、これからの里山の暮らしや豊かさをともに模索する機会を創出していきます。 猪鹿狩りに向かう猟師と猟犬 世界農業遺産に登録されている焼畑農法 ■プロジェクトの背景 構想から実現へ 本プロジェクトは、椎葉村の観光振興計画を策定する中で生まれました。 住民と村の将来について対話を重ねるなかで、焼畑や狩猟、食文化など、人と自然が育んできた豊かな価値が今も暮らしの中に存在する一方で、その価値を体感できる滞在施設や飲食施設があると良いのではないかという意見がありました。 観光振興計画の策定を支援した株式会社さとゆめ(以下、「さとゆめ」)は、その過程で、村の一級建築士であり、猟師でもあり、そして椎葉村観光協会会長を務める尾前一日出氏と出会います。 尾前氏は長年、「森を駆け回り、木に登り、川のせせらぎを聞きながら仲間と遊ぶ。自然の中で五感を使い、失敗しながら学ぶ原体験を、次の世代にも手渡したい」という想いを抱き続けてきました。 その想いの先に描いてきたのが、故郷・椎葉村の自然そのものを舞台に、大人も子どもも本気で遊び、学び、育ち合う「森の遊園地」という構想です。 自然の中で挑戦し、成長する場を地域とともに育んでいく。その思想は、椎葉村の自然や暮らしそのものを未来へつなぐという、本プロジェクトの理念とも深く重なっています。 椎葉村で構想を描き続けてきた尾前一日出氏、観光の計画策定から伴走支援するさとゆめ、そして地域とのつながりを支える椎葉村観光協会。この三者が力を合わせることで、構想は本格的な事業へと動き出しました。 その実現に向けて、宿泊・体験事業を担う「株式会社尾前の環」(尾前一日出、さとゆめ、観光協会の共同出資)と飲食事業を担う「株式会社巡る椎葉」(さとゆめ、観光協会の共同出資)を設立し、滞在・食・交流を通じて椎葉村の価値観に触れる拠点づくりを進めています。 尾前一日出氏 森の遊園地で遊ぶ子供たち ■大事な局面を超えた先にある「のさり」 椎葉村には、「のさり」という言葉があります。 それは、人ができる限りのことを尽くし、ときには困難や犠牲を乗り越えた先で、山の神や自然から授かる恵みを意味します。ただ幸運を待つのではなく、自らの務めを果たした先にある恵みへの感謝。その自然との向き合い方が、「のさり」という言葉に込められています。 この価値観を今も色濃く残しているのが、椎葉村の狩猟文化です。 猟師は山へ入る前に山の神へ御神酒を供え、山の恵みへの感謝と無事を祈ります。また、「さかめぐり」と呼ばれる十干十二支の方位や暦の巡りに従い、猟をしてはならない方角を守ります。山を知り尽くした猟師であっても、自らの都合ではなく自然の理に従う。その姿勢が、代々受け継がれてきました。どれほど経験を積んだ猟師でも、獲物に出会えるとは限りません。だから椎葉村では、「獲った」のではなく、「授かった」とも考えます。 欲を出し過ぎることなく、自然への感謝を忘れず、人ができる限りのことを尽くす。その先にある恵みを受け入れることが、「のさり」の精神です。 食べること、体験すること、泊まること、そして人と出会うこと。その一つひとつの出来事が、自然との向き合い方や、これからの里山の暮らし、生き方を見つめ直すきっかけになることを願っています。私たちは、この土地の食材を味わい滞在するだけでなく、その背景にある自然との向き合い方や、人と自然が支え合う暮らし、そして椎葉村に受け継がれてきた「のさり」の精神を、食や暮らしを通じて伝えていきたいと考えています。 シシと猟犬 猟師が守る掟「さかめぐり」 ■里山の恵みを体感する“食”と“滞在”の拠点を開業 里山の暮らしや椎葉村の食文化、人とのつながりを体感できる拠点として、2026年7月よりレストラン「のさり」とスナック「Nava(なば)」を開業します。 レストラン「のさり」では、鹿や猪などのジビエ、エノハ、椎茸、山菜、野菜など、椎葉の豊かな山の恵みを活かした料理を提供します。 夜には同じ拠点でスナック「Nava」として営業します。「Nava」は椎葉の方言で「椎茸」を意味する言葉です。地域住民、移住者、観光客が自然に集