ホワイトストーンギャラリー銀座新館では、蔡康永(ケヴィン・ツァイ/K. Tsai CAI)による日本初展覧会 「どれくらい自分を忘れていたのか?」 を開催いたします。 蔡康永は、台湾を代表する司会者・作家・クリエイターとして幅広く活動する一方、長年にわたり現代アートのコレクターとしても美術に深く関わってきた。近年は、自身の言葉への鋭い感受性をもとに、文字を用いた作品の制作を本格化させている。司会者・作家として長年言葉と向き合ってきた経験が、絵画という表現へと結実したものだ。 現代アートにおいて文字は、社会批評やアイデンティティの表明、グラフィティ文化を構成する要素であり、その線自身や形態を意匠として取り入れる表現も多様に展開されてきた。一方、蔡康永の作品では、文字は「言葉そのものの意味」を鑑賞者へ届けるために存在している。簡潔な画面構成によって色彩やデザインへの注意を必要最小限に留めることで、鑑賞者は一つの言葉や短い文章と静かに向き合うことになる。日常のなかで見過ごされ、もしくは慣れによって重みを失っていた言葉が、絵画という形式を通すことで鑑賞者の内面に結びつき、新たな意味を帯びて立ち現れる。 本展の作品について、「これはもともとあなたの絵だった。私はそれを見つけ出す手伝いをしただけ」と蔡康永は語る。この言葉が示すのは、作家の自己表現ではなく、鑑賞者一人ひとりの人生や感情に寄り添い、最早自分自身の一部であると感じられるような作品を制作するという、奉仕の精神にほかならない。鑑賞者が本来の自分を思い出し、取り戻すための装置として、作品は機能しているのだ。 本展では、これまで用いてきた中国語や英語に加え、初めて日本語による作品も発表される。そこには、日本の鑑賞者の内面にも寄り添おうとする作家の姿勢が表れている。文字があふれる現代社会において、これらの作品が鑑賞者と人生とをつなぐ「電線」のような存在となり、自分自身との静かな対話を促す機会となるだろう。 なお、蔡康永の唯一のアーティスティック・コラボレーターである鄭以琦(Yichi Cheng)とのコラボレーション作品もあわせて展示される。 ⚫︎ 作家プロフィール 蔡康永 (ケヴィン・ツァイ/K. Tsai CAI) メディアや出版の分野で活躍する一方、蔡は言葉、感情、そして人と人とのつながりをテーマとした独自のアート活動を展開してきた。一人ひとりのために紡いだ言葉を作品化した展覧会シリーズ「這句話送給你(A Sentence That Belongs to You)」は、台北の商業ギャラリーにおける来場者数記録を更新した。さらに、国際的アーティストの蔡國強(ツァイ・グオチャン)とのコラボレーションをはじめ、村上隆やミュージシャンの阿信(陳信宏)らとのプロジェクトなど、分野を横断した数多くの芸術活動に参加している。 執筆、映像制作、そして視覚芸術を通じて、蔡は言葉がいかに人々のアイデンティティや親密さ、そして自己理解を形づくるのかを探求し続けている。 鄭以琦(Yichi Cheng/1992年生まれ、台湾) 鄭以琦は台湾を拠点に活動するマルチディシプリナリー・デザイナー/アーティストであり、蔡康永の唯一のアーティスティック・コラボレーターでもある。彼の実践は、ビジュアルアート、映画の美術・アートディレクション、商業プロダクションデザイン、舞台美術、空間デザイン、ブックデザイン、プロダクトデザインなど多岐にわたる。また、音楽イベントにおいて演奏活動も行っている。国立台北科技大学(NTUT)工業デザイン学科を卒業。在学中には最優秀卒業生として表彰された 本展では、《Ordinary People & Extraordinary Words(平凡な人々と特別な言葉)》シリーズを東京で初公開する。鄭はクラシックソングや文学作品から引用した言葉を用い、人物の顔のパーツをテキストへと置き換える。借用された言葉は肖像の一部となり、個人の記憶や感情、経験を映し出す装置として機能する。言葉とイメージの境界を横断しながら、作品は人と人とのつながりやアイデンティティのあり方について静かに問いかけている。 ⚫︎ 展覧会概要 / Gallery Exhibition 蔡康永『どれくらい自分を忘れていたのか?』 会期:2026年7月1日(水)〜7月25日(土) 会場:ホワイトストーンギャラリー銀座新館 営業時間:11:00 - 19:00 休館日:日曜 / 月曜 所在地:東京都中央区銀座6-4-16 展覧会ページURL: https://www.whitestone-gallery.com/ja/blogs/gallery-exhibitions/tyo-n-k-tsai-cai-072026 ⚫︎ 関連イベント