1,400トンに及ぶセクターモジュール(構成部品および吊り具を含む)をトカマクピットへ降下させる作業には、極めて慎重な操作が求められます。(写真提供:ITER機構) 南フランスのサン・ポール・レ・デュランスでは、将来のクリーンで持続可能なエネルギー源として期待されるフュージョンエネルギーの実現に向けて、日本、欧州連合(EU)、米国、中国、韓国、インド、ロシアの7極(世界30ヶ国以上)が協力し、世界最大の核融合実験炉ITER(イーター)の建設が進められています。 ※ ITER計画 については ITER日本国内機関Webサイト をご参照ください。 ITERはトカマクと呼ばれる世界最大の実験装置で、その中心にある真空容器は、40°の巨大なセクターモジュール9基を精密に組み合わせることで完成します。 ※以下の記事は、ITER機構 Newsline を翻訳(一部編集)したものです。 36時間をかけて据え付け作業が完了 大きな目標の達成は、小さな一歩の積み重ねによって実現されます。5月26日~27日に行われた真空容器セクターモジュール4号機のトカマクピットへの搬入では、綿密に計画された吊り上げ手順が実施されました。具体的には、事前試験および検証に9時間、ピットまでの移送に12時間、そして最終設置位置への超高精度な着座作業に15時間が費やされました。 ITERトカマク組立ピットへ新たな真空容器セクターが搬入されました。これにより、9基あるセクターモジュールのうち5基、すなわち約56%の据え付けが完了したことになります。 今回の作業を統括した主任建設マネージャーは次のように述べています。 「今回の吊り上げ作業が成功したのは、作業のあらゆる段階で優れた仕事が行われたからです。入念な準備とチームの迅速な対応力により、作業中に発生したさまざまな課題にも適切に対応し、安全な据え付けを完了することができました。」 吊り上げ前の手順は、5月26日(火)午前6時に開始されました。測量データ(メトロロジー)の確認後、作業員はセクターモジュールと天井クレーンを接続するワイヤーに徐々に張力を加えました。 続いて、セクターモジュールを90mm持ち上げる試験吊り上げが実施され、この段階で一部のセンサーが取り外されました。その後、セクターサブアセンブリ治具内でモジュールを固定していた締結具(ラッシング)が解除され、さらに500mmまで持ち上げる試験が行われました。 セクターサブアセンブリ治具からの取り出し作業は、9時間に及ぶ事前手順の完了後に開始されました(写真提供:ITER機構) 最終的な測量チェックで干渉がないことが確認された後、セクターモジュールは5月26日午後3時直前に治具から引き出され、慎重にトカマクピットへ移送されました。天井クレーンによって降下されたセクターモジュールは、翌27日午前3時には最終設置位置の500mm上方まで到達しました。 その後、センサーの再接続、ラッシングの取り付け、干渉の再確認などが行われました。 最終段階では、セクターモジュールを重力支持装置と正確に位置合わせし、将来の組立作業を支援するトロイダル磁場コイル据付治具に接触させました。その後、ボルトを締結し、5月27日午後6時過ぎにセクターモジュールの全重量が天井クレーンから完全に解放されました。 工期短縮に大きく寄与 今回設置された4号機も、先行するセクターモジュールと同様に、ITERの基準スケジュール(ベースライン)より前倒しで据え付けが完了しました。これまでの経験から得られた知見が、効率向上と工期短縮に大きく寄与しています。 例えば、セクターモジュール7号機では、真空容器セクターが治具に搬入されてから2025年4月にトカマクピットへ据え付けられるまでに7.4か月を要しました。一方、今回の4号機では同じ工程が5.5か月まで短縮されました。 今夏に、6基目の真空容器セクターモジュールの据え付けを予定 セクターモジュール組立プロジェクトリーダーは次のように述べています。 「学習効果による効率向上は予想していましたが、その進展は想定以上に速く、今まさに成果として表れています。この進歩は、チームが積み重ねてきた経験と、そこから得られた教訓によるものです。」 ドーナツ型のITER真空容器は、全周360°のうち約200°分のセクターモジュール据え付けが完了しており、全体の約56%まで進んでいます。 現在、真空容器セクターモジュール5基がトカマクピット内で並んで据え付けられています。6基目のセクターモジュールは今夏に装置の反対側へ設置される予定で、さらに7基目も年内に据え付けられる見込みです。 セクターモジュールは、後続の組立工程で位置調整や据え付けを支援する「TIPIテーブル」と正確に接続され