一般財団法人重症筋無力症かけはし基金(以下、当法人)は、2026年5月27日に法人登記を完了し、このたび正式に活動を開始いたしました。6月の「重症筋無力症啓発月間」にあわせ、患者の経験を医療や研究、そして社会へとつなぐ活動を本格化させてまいります。 設立に先立ち実施したクラウドファンディングでは、多くの方々から温かい応援をいただきました。その結果、目標額である300万円を大きく上回るご寄付が集まりました。 このご支援をもとに、当法人は患者の経験を記録し、その声を可視化し、医療や研究、医学教育、啓発活動へとつなげる取り組みを進めてまいります。 重症筋無力症について 重症筋無力症(Myasthenia Gravis:以下、MG)は、免疫の異常により脳からの命令が筋肉へうまく伝わらなくなり、全身の筋力低下や筋肉が疲れやすくなる症状をきたす国の指定難病です。 まぶたが下がる(眼瞼下垂)、物が二重に見える(複視)といった目の症状に加え、手足が上がらない、声が出しづらい、呂律が回らない(構音障害)、飲み込みにくい、呼吸が苦しいなど、多岐にわたる症状を呈し、患者の日常生活に大きな影響を及ぼします。 また、症状には時間帯や日による変動があり、個人差も大きいことが特徴です。外見からはその困難が見えにくいため、診断までに長い時間を要したり、周囲から理解されにくいといった課題があります。 設立の背景 近年、MGの治療は飛躍的な進歩を遂げています。しかしその一方で、診断に至るまでの過程や、症状の変動が日常生活や就労、社会参加に与える影響については、十分に可視化されているとは言えません。 特に、診断まで長い期間を要した患者や、一般的な検査では異常が見つかりにくい抗体陰性例などは、医療や社会制度の中で見落とされやすい現状があります。患者は疾患による身体的な苦痛に加え、「理解されにくさ」という二重の困難を抱えることがあります。 当法人理事の上里由希子は、内科医として医療に携わる一方、自身も長期間MGの症状を抱え、診断や治療の遅れ、症状の変動に伴う生活上の困難を経験してきました。医師でありながら、自身の症状を既存の検査や医学的な枠組みだけでは十分に説明できない経験を通じて、患者の困難が医療や社会の中でいかに見落とされうるかを当事者として体感してきました。 医師・患者の両方の立場から、自身の経験を語る上里由希子・当法人理事 こうした当法人理事たちの当事者としての経験と、医療・研究・支援に関わる人々の問題意識が、重症筋無力症かけはし基金設立の起点となっています。 当法人では、法務・会計分野の専門家の皆さまからプロボノによるご支援をいただくとともに、脳神経内科学、看護学、理学療法学、患者学など各分野の第一線でご活躍されている先生方に評議員としてご参画いただき、多様な専門的視点に支えられながら活動を進めています。 患者の声を医療と研究につなぐために 患者報告アウトカム(PRO) 近年、医療や研究の分野では、検査データや医療者による評価に加え、患者自身が感じている症状や日常生活への影響、治療による変化や実感も重視されるようになってきています。 例えば、「薬により頭や首が軽くなった」「以前は歩けなかった距離を休まず歩くことができるようになった」といった変化は、患者本人が日々の生活の中で気づく情報です。こうした患者自身による報告を通じて得られる健康状態や生活の質に関する情報は、「患者報告アウトカム(PRO:Patient-Reported Outcome)」と呼ばれ、治療の効果や患者にとって価値のある変化を理解するための重要な指標として医療・研究の両分野で活用されています。 患者・市民参画(PPI) 患者や市民が研究の計画、実施、発信の過程に関わることは、「患者・市民参画(PPI:Patient and Public Involvement)」と呼ばれています。患者が「研究される対象」として参加するだけでなく、研究者や医療者とともに、どのような問いを立て、どのような方法で進め、その成果をどのように社会へ届けていくかを共に考えていく取り組みです。 例えば、症状の波の中で日常生活をどのように工夫しているのか、治療の効果をどのような場面で実感しているのかといった患者の経験は、研究者だけでは気づきにくい視点をもたらすことがあります。患者が研究の初期段階から関わることで、研究が当事者にとってより身近で役に立つものになることが期待されています。 当法人は、こうした考え方を大切にしながら、患者の経験を医療者や研究者と共有し、患者の声や経験から得られる知見を社会に広く発信し、医療や研究につなげていくことを目指しています。 今後取り組む主な事業 公式ウェブサイト 1.患者の経験を記録し、可