一般社団法人農山漁村文化協会(埼玉県戸田市)は『ソーラーシェアリングで始める持続的な農業―プラン・営農・設備・経営の基本』を、2026年6月22日(月)に出版いたしました。 農地に太陽光パネルを設置し、農業生産と発電を両立するシステム、「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」。脱炭素への関心の高まりや企業の再エネ需要のほか、中東情勢に伴う原油高騰などから、改めてその役割が期待されています。 本書では、ソーラーシェアリングに長年取り組んできた著者の経験をもとに、その理念と意義、パネルや設備の基礎知識、農業委員会への届けや諸制度、農業をベースに置いたプラン立案のポイント、資金調達まで、農家・農村のためのソーラーシェアリングの基本をわかりやすく解説しています。 ■「本物のソーラーシェアリング」を増やしたい 2013年3月に農林水産省の通達により営農型太陽光発電が認可されてから13年。国内の導入件数は8000件を超え、各地に優れた実践者も生まれ、いよいよ普及の本番を迎えています。しかし、中には農業をおろそかにした事業者が一定数見受けられ、それがソーラーシェアリングに対するマイナスイメージにつながり、健全な営農を目指す事業者にとって大きな障害となっている現実もあります。だからこそ今後は、農業経営や地域復興、自然生態系の保全を大切にした「本物のソーラーシェアリング」をいかに増やしていくかが、何よりも重要です。本書は、そのための入門書であり、バイブルとなる一冊です。 ■耕作放棄地を地域資源に変える ソーラーシェアリングの真価は、農業経営の中に発電にともなう収入を加え、農業そのものを持続的なものにしていくことにあります。ソーラーシェアリングを行なうには行政の許可が必要となりますが、その判断の基本にあるのは「太陽光パネルの下で真面目に農業が行なわれている」ということです。採算性が悪くて農業を続けられないと諦めていた土地でも、売電による安定収入があれば、営農再開の道が開けてきます。やっかいものの耕作放棄地が地域資源に変わり、各自の農業経営だけでなく地域全体の「農村経営」にも寄与していくのです。 匝瑳市の豊和・開畑地区。ソーラーシェアリングをきっかけに耕作放棄地も蘇った。 将来的には、施設園芸で使うエネルギーを自給したり、EVトラクタが普及すればそのエネルギーを自分たちで発電した電気で賄ったりする、ということが可能になるかも知れません。 ■地域課題を解決する仕組み 著者の東光弘さんが代表を務める市民エネルギーちば(株)を中心としたグループは現在、千葉県匝瑳市の約23haの圃場でダイズと大麦をJAS有機栽培しており、太陽光設備の発電容量は約5MW(AC)に達しています。 収穫した大豆は自社で味噌に加工するほか、千葉県市川市にある福祉作業所が母体の「みののむら(實埜邑)」で大豆コーヒーの原料になったり、豆腐店に卸したりしています。 ソーラーパネルの発電事業からは、栽培を担う関連会社への耕作協力金のほか、地権者への地代、地元の自治会や小学校PTAなども加わって設立した豊和村づくり協議会への協賛金が支払われ、「地域基金」の財源になっています。 ソーラーシェアリングは、発電事業者と耕作者、地権者が発電収入を分け合うことで、荒廃した農地を再生し、持続可能な農業・社会をつくる力を秘めているのです。 ■ソーラーシェアリングを成功させる5つのポイント ソーラーシェアリングは「理念(物語性)」「営農」「設備」「費用」「電気の需要先」の5つの要素でできています。それらを踏まえて、実際に取り組むために必要なポイントを紹介します。 理念…将来にわたってこの地域をどうしたいか、次世代にどのような環境や社会を残したいかなど、最初にそれぞれの地域で願いやビジョンを描くことが大切です。この本では農福連携型や市民参加型など、ソーラーシェアリングを活用した11の事例を紹介しています。 営農…パネルの下での健全な営農が必須となっています。この本では、小規模で自家用野菜を育てるスタイルから、少量多品種で数10aから数haを家族農業で担っていくスタイル、さらに数10ha~数100haの大規模農業生産法人まで、様々なサイズのソーラーシェアリングを記載しています。 設備…発電の規模をどうするか、作物への影響はないのか、風や雪で壊れないか、盗難対策をどうするかなど実務的に踏まえておくべき点について紹介します。今後とくに期待される「ペロブスカイト太陽電池」についても、実証試験の様子や今後の展望について解説しています。 費用…初期投資にかかるランニングコスト、資金調達の方法や返済の見通しなど誰もが気になるお金の話。様々なスキームを駆使した資金調達の方法も紹介しています。 電気の需要先…電気を地産地